LIFE SPAN 老いなき世界②

Book Column



皆さんお疲れ様です!

前回に引き続き、LIFE SPANを紹介していきたいと思います!

本全体としてのレビューは前回の記事をご覧ください。

前回のコラムを復習しておきましょう。

著者の主張を一言で言うと「老化は病気だ」ということです。

そしてその老化を治療する事ができると言うのです。

普通ではそのような発想は起きませんよね。

しかしハーバード大学教授で老化研究の第一人者である著者が言ってるんだから納得せざるを得ません。

本書を読み進めるとそんなハロー効果忘れるくらい詳細にわかりやすく説明してくれています。

老化の唯一の原因はサバイバル回路にあります。

そしてサバイバル回路のサーチュインというタンパク質が老化の原因の一つとなっていました。

また、ゲノムの問題ではなく、エピゲノムが老化の原因になっている事が判明しました。

エピゲノムというアナログ情報の混乱が老化の典型的特徴が出現する原因でした。

老化は身体の衰えをもたらし、生活の質を制限し、特定の病的異常もたらします。

これだけの条件が揃っていて病気と言わないのが不思議なくらいです。

それは老化が誰にでも起き、仕方ないことだと根深く定着してしまっているからです。

本書を読むことで老化について考え直す必要があると感じることでしょう。

しかもそれだけでは終わりません。

老化は治療できるのです。

第二部ではその方法を紹介しています。

それでは第二部の内容を見ていきましょう。



長寿遺伝子を働かせる方法

著者による25年間の研究で間違いなく言えることは食事の回数を減らすことは有効だということです。

食事制限が健康と長寿の為になるのは疑う余地はないとしています。

確かに本書以外にも断食や食事制限を推奨している本は数多くあります。

では科学の世界ではどうでしょうか。

カリフォルニア大学のロイ・ウォルフォードによるとカロリー制限が人体に及ぼす効果を以下に示しています。

①体重が減る。(15~20%)
②血圧が下がる (25%)
③血糖値が下がる (21%)
④コレステロール値が下がる。(30%)

これは人間の観察によって得られたデータですが、近年は正式に人を対象とした研究も始まっています。

研究の成果が発表される日が楽しみですね。

ただ、人が生涯にわたってカロリー制限を受けたらどんな影響が現れるかについては短期的な研究や経験を通してしか語れない現状です。

ただ、こんな研究もあります。

人間の親類であるアカゲサルを用いての実験です。

アカゲザルは遺伝的に人間のいとこにあたります。

この研究ではアカゲサルに対してカロリー制限を行うというものです。

するとアカゲザルの最大寿命は40歳ですが、カロリー制限をした20頭のうち、6頭がその年齢に達していました。

アカゲサルの40歳は人間でいう120歳に相当します。

しかもカロリー制限を一生続けなくてもそれだけの効果が現れました。

一部のアカゲサルについては30%のカロリー制限を中年になってから始めましたが、それでも問題なかったのです。

マウスの場合も同様で生後19か月(人間でいう60代)の段階でカロリー制限をスタートさせても寿命を延ばす効果が確認されています。

ただし、始めるのは早ければ早いほど良いとのことです。



間欠的断食法

食物が足りない時の遺伝子反応を確実に再現することができれば、ずっと空腹でいる必要はありません。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のヴァルター・ロンゴは「間欠的断食法」を盛んに宣伝しています。

これは食事の量は普段とは変えずに周期的に食事を抜く期間を差し込むというものです。

このように断続的にカロリーを制限することの研究は昔からされています。

だから近年でも様々な断食法やカロリー制限の本が多く見かけられるのです。

方法はいくつもあるので自分に合った方法を探すのが良いと思いますが、私の場合は週末だけ16時間空腹の時間を設けるようにしています。

夕方6時にご飯を食べて、11時頃に早めの昼食を摂るようにしています。

まだ始めたばかりなので長期的な効果は実感できませんが、短期的には頭がすっきりして日中の眠気が少なくなりました。

本書の中では「イート・ストップ・イート法」や「5;2ダイエット」「16;8ダイエット」が紹介されています。

いずれにしても基本は同じです。

サバイバル回路を働くようにすればいいのです。

アミノ酸を制限する

アミノ酸を摂取しなければ私たちは死んでしまいます。

特に必須アミノ酸が無ければ細胞は酸素を生成することができません。

肉類には9つの必須アミノ酸が含まれています。

普段何気なく食べている手軽なエネルギー源ですが、相当な代償を伴います。

動物性タンパク質の中でもホットドック、ベーコン、ハムは恐ろしく発がん性が高いことが知られています。

結腸、直腸癌、すい臓癌、前立腺癌との関連が確認されています。

赤身肉はカルチニンという物質が多く含まれており、これが腸内細菌によって変換されるとトリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)になります。

TMAOは心臓病の原因となることが疑われています。

ご覧の様に動物性タンパク質は現代において手軽にアミノ酸を摂取する手段となっていますが、代償を伴います。

実は動物性タンパク質を植物性タンパク質に変えるだけで全死因死亡率が著しく低下すること複数の研究で示されています。

前回のcolumnで少し触れたmTORという物質を思い出してください。

mTORをあまり働かさない様にすると、細胞分裂に使うエネルギーを減らしてオートファージーに振り向けます。

そして損傷したタンパク質や折りたたみ不全のタンパク質を再利用するようになります。

こうした反応を呼び起こすことが健康寿命を延ばすうえで重要となります。

mTORを活性化するアミノ酸はメチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニンです。

これらの摂取を控えると寿命が延びるという相関関係が確認されています。

とはいえ、これらを選択的に避けるのは難しいと思います。

肉などの動物性タンパク質を控え、植物性タンパク質を多くとるように心がけるだけでも十分効果はあると思います。



運動の効果

元気に暮らすには運動が良いということは何となく昔から言われています。

私たち理学療法士も「運動すれば血行が改善して心臓や肺が強くなるから毎日やりましょう。」「有酸素運動は認知症の進行を遅らせるからウォーキングしてくださいね。」なんてことを言ったりします。

重要なのはなぜそうなるのか?ということです。

そのかなりの部分は微小な細胞レベルで生じていました。

運動をするとテロメアが長くなるのです。

老化の典型的特徴はテロメアの短縮でしたね。

テロメアが長い=老化を遅らせることができるということです。

運動でもサバイバル回路が活性されるのです。

運動によりサーチュインやmTOR、AMPKといった長寿関連物質は正しい方向に調整されます。

では運動強度はどれくらいが良いのでしょうか?

メイヨークリニックの研究チームによると健康を増進する遺伝子を一番多く活性したのは高強度運動トレーニング(HIIT)でした。

HIITについては以前YouTubeにて論文紹介をしています。

是非、そちらもご覧ください。

【HIIT】ちょっとくらい手を抜いてもいいのか解説します

HIITを行うと呼吸は速くなり、心拍数は最大心拍数の75%から80%となります。

このような状態を低酸素応答と呼び、身体がストレスを受けるにはもってこいです。

動画によると多少手を抜いても問題なさそうです。

それでも毎日やるのはきついし、体力が無いという人は週に6.5~8キロ走ると良いです。

それだけでも心臓発作で命を落とすリスクを45%減らし、全死因死亡率が30%下がることが示されています。

一日15分程度の軽いジョギングで死亡率が下がるならそこから始めてもよさそうですね!



寒さに身をさらして長寿遺伝子を働かせる

2006年スクリスプ研究所のチームが遺伝子操作によってマウスの深部体温を通常より0.5℃低くすることに成功しました。

するとメスでは寿命が20%長くなり、オスでは12%寿命が延びました。

どうやら寒さは寿命を延ばすようです。

しかしそれだけでは無いようです。

この遺伝子操作されたマウスはUCP2タンパク質(ミトコンドリア脱共役タンパク質)を視床下部に注入されています。

このUCP2は褐色細胞を活性化するのです。

褐色細胞にはミトコンドリアが豊富に含まれており、最近では成人にもあることが分かっています。

褐色脂肪細胞を多く含む動物や震える寒さに3時間ずつさらされた動物はミトコンドリア内のSIRT3酵素の量が多いことが確認されています。

SIRT3酵素はサーチュインの一種でUCPタンパク質を高める効果があります。

しかもそうした動物は糖尿病、肥満、アルツハイマー病になる確率が極めて低いことが示されています。

褐色脂肪は素晴らしい効果をもたらしてくれます。

褐色脂肪を増やすためにはやはり寒さにあたるのが良いようです。

ただ加齢とともに褐色脂肪は生成されにくくなります。

本書によれば生活習慣を変えるには若いうちの方が良いとしています。

サウナの効果

寒さは長寿遺伝子を働かせることがわかりましたが、高温についてはどうでしょうか?

著者による酵母の研究がヒントを与えてくれます。

酵母の培養する温度を30°から37°に上げ、生命が維持できるぎりぎりの状態に置く実験を行いました。

すると酵母のPNCI遺伝子のスイッチが入ってNDAの生産量が増えSir2酵素が活発になりました。

その結果酵母は通常より30%長生きをしました。

しかもカロリー制限と同じメカニズムで寿命が延びたというのは興味深いですね。

では高温は人体に対してもプラスに働くのでしょうか?

私達は恒温動物なので、体内の酵素は大きな温度変化に耐えられません。

少なくとも皮膚や肺を一次的に高温にさらすと様々なメリットがあります。

2018年の研究ではサウナを利用する人はそうでない人と比べて体力、活力、社会性、健康状態全般において優れているという結論を出しています。

私もたまにサウナを利用しますが、やけにムキムキのおじいさんとかいますよね。

それにロウリュウおかわりする人は大体ムキムキのおじいさんですよね。

ただし、この研究には病人や体の不自由な人がサウナに行けないせいもあるという指摘もあります。

それ以外にもフィンランド東部に住む男性を対象に20年にわたって追跡調査したものがあります。

きわめて頻繁にサウナを利用する人はそうでない人と比べて心疾患発症率、心臓発作で命を落とす件数、全死因死亡率が2分の1だったそうです。

サウナの研究はこれ以上深堀したものがなく、研究が待たれるところです。

いずれにしても軽いストレスは体にいいということです。



老化を治す薬

廊下への影響がすでに実証されているものは2つあります。

①ラパマイシンと

②メトホルミンです。

①のラパマイシンはイースター島で発見された放線菌(ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス)から作られます。

当初は抗真菌薬として期待されましたが、すぐに免疫抑制機能があると判明し、使われなくなりました。

ところが近年の研究で寿命を延ばす働きがあるということが様々な動物実験で確認されています。

著者の得意とする酵母の研究でもそうです。

正常な酵母を2000個培養したとすると6週間後にまだ生存能力があるものは数個しかありません。

ところがラパマイシンを与えると6週間後にも半数が元気な状態を保ちます。

また、ショウジョウバエにラパマイシンを与えると5%長く生きます。

余命数か月のマウスにラパマイシンを摂取させると余命は9~14%長くなります。

人間に換算すると10年健康寿命が長くなった計算となります。

親が高齢であるほど、子が病気にかかるリスクが高まることは以前から知られています。

それはエピゲノムの影響です。

しかしラパマイシンの処置を受けたマウスはこの傾向に逆らいます。

ドイツ神経変性疾患センターの研究チームが、高齢の父親を持つマウスを詳しく調べたところmTORの活動が活発になっていることが分かりました。

ラパマイシンを与えるとmTORの働きを抑え、親の年齢が高いことによる悪影響が消えたのです。

このようにラパマイシンを含むmTOR阻害分子は世界を変える可能性があります。

実際には研究段階のことも多く、今後の研究が待たれます。

「ここまで読んだのになんだよ!」と言われてしまいそうですが、②メトホルミンは効果が高いうえに比較的安全な事が証明されています。

メトホルミンは糖尿病治療薬として手ごろな価格で処方されています。

医療従事者であれば聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

そんな薬が長寿とどんな関係をしているのでしょうか?

ごく少量のメトホルミンを摂取するとマウスの寿命は6パーセント延びます。

人間なら5年分の健康寿命が追加されたことになります。

しかもマウスでは悪玉コレステロール値が下がり、身体能力が改善しました。

さらにげっ歯類にメトホルミンを与える研究26件のうち25件のがん予防効果が確認されています。

メトホルミンを摂取した場合もカロリー制限に似た効果が現れますが、ラパマイシンの様にTORを阻害する訳ではありません。

ミトコンドリアの代謝反応を制限し、AMPKを活性することでミトコンドリアの機能回復を促進します。

また、SIRT1の活性も高めます。

ほかにも癌細胞の代謝を抑えたり、折りたたみ不全のタンパク質を除去する効果が明らかになっています。

ある研究では68歳から81歳までのメトホルミン服用者4万1千人を対象に9年間の追跡調査を行っています。

その結果服用者の間では認知症、心血管系疾患、癌、虚弱、うつ病になる確率がメトホルミンによって低減されることが確認されました。

これだけ魅力的な薬ですが、今のところ「抗老化薬」として処方している国は現時点でありません。

糖尿病に罹っていなければ入手困難なのが現状です。

サーチュインを活性化する化学物質

著者らはサーチュインを活性する物質を探していました。

すると偶然フィセチンとブティンという成分に注目します。

この二つは構造が似ています。

そしてこの二つに構造が似ている物質がレスペラトールです。

このレスペラトールが老化を遅らせる物質だったのです。

レスペラトールは赤ワインに豊富に含まれています。

今晩から赤ワインを飲む口実にしてみてください。

ただし、1000杯以上飲まないと必要量摂取できないということは秘密にしておきましょう。(笑)

レスペラトールは残念ながら薬には向かない物質でした。

しかし、一つの物質が老化を遅らせる可能性があるということを教えてくれました。

実際にレスペラトールをきっかけに世界中で老化研究の競争が始まったのです。



サーチュインの燃料

サーチュイン活性化合物(STAC)は続々と発見されていきました。

その中でも強力なのがNDAです。

NDAは7種のサーチュインすべてを活性化します。

そのNDAはサーチュインの燃料だったのです。

それを突き止めたのが日本人研究者の今井眞一郎です。

NDAが無いと私たちは30秒と生きられないほど重要な物質だったのです。

NDAが重要だということは伝わったと思いますが、NDAを増強する物質が見つかっています。

NMNとNRです。

NMNを老齢期マウスに与え始めると若いマウスより走れるようになります。

腎臓損傷、ミトコンドリア病、神経変性、フリードライヒ運動失調症を防ぐ効果も確認されています。

更に詳しい研究は現在進行中です。

待ちきれないという人はNMNとネットで検索してみてください。

サプリメントが売られていると思います。

少しお高いですが、試してみる価値はありそうです。

まとめ/感想

全て紹介しきれませんでしたが、本書は間違いなく良書です。

私も読んでいて感動しました。

既に老化すら治せる時代なのかと心躍りました。

それと同時に不安も覚えました。

年金はどうなるのか、人口が増え続けるのではないか?

本書の後半では筆者による未来の展望について述べられています。

少しだけ触れると人口は増え続けることは無いということです。

近年の人口増加は寿命が延びたからではなく、乳幼児の生存率が上がったことによるところが大きいようです。

どんな未来が待ち受けているのかわかりませんが、長く健康でいたければ、食事を減らして運動をするのが良いと思います。

これは私たちが既に何となく行っていることであり、今更言われなくてもわかっているという声が聞こえてきそうです。

クスリについては今後薬局で長寿薬や長寿サプリが売られる日が来るかもしれません。

誰もが平等に健康で長生きできる世の中が来ると良いですね!

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!



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