LIFE SPAN 老いなき世界①

David A. shinclair with Matthew D. laplante 著 梶尾あゆみ訳



はじめに
第一部
第一章;老化の唯一の原因
第二章;弾きかたを忘れたピアニスト
第三章;万人を蝕む見えざる病気

第二部
第四章;あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
第五章;老化を治療する薬
第六章;若く健康な未来への跳進
第七章;医療におけるイノベーション
第八章;未来の世界はこうなる
第九章;私たちが築くべき未来
おわりに

読みやすさ★★☆☆☆
エビデンス度★★★★★
リハビリ関連度★★★☆☆

皆さんお疲れ様です。

今回紹介する本は老いについて扱った本です。

もう年だから脂肪が取れなくて、、、とか

最近歳をとったからしわとシミが気になるな、、、とか

人間誰しも老いるものだと思っています。

しかし、それは間違いでした。

老化は病気だったのです。

生物としての人類はかつてないほど長生きをするようになっています。

しかしより良く生きているかと言われたら真逆です。

人生最後の数十年というものはお世辞にも心惹かれるものではないケースが大半ですよね。

まさに病院、老健などの施設で働く私たちは目の当たりにしているはずです。

人工呼吸器をして、様々な薬を投与され、股関節を骨折し、寝たきりとなり、認知症を発症し、癌になれば放射線を当てられ、手術に次ぐ、手術を強いられます。

そして莫大な医療費がかかります。

私達は平均寿命を延ばすことに成功しましたが、最大寿命を延ばすことが出来ていません。

全体の99.98%は100歳を待たずして人生を終えています。

日本でも最近は健康寿命を延ばそうとしていますね。

長野県では信州ACEプロジェクトと題し健康寿命を延ばそうというプロジェクトを行っています。

なぜ行っているかは平均寿命と健康寿命の全国順位の差を見ればわかります。

厚生労働省によると長野県の男性の平均寿命は全国2位、女性は1位です。

これが健康寿命となると男性20位、女性はなんと27位です。

長野県は寝たきりとなってしまう高齢者が多いのです。

長野県に住んでいる皆さん。安心してください。

著者のデビッドAシンクレアさんは長い健康寿命を謳歌できる人生は既に射程圏内に入っていると本書の冒頭で語っています。

ちなみに著者はハーバード大学の教授です。

まさに老化の権威です。

これで信憑性がグッと上がりましたね。(笑)

それでは本書の内容を見ていきましょう。



サバイバル回路

まず本書の中で頻繁に出てくるサバイバル回路について説明しなければなりません。

太古の昔、まだ生命が誕生して間もない頃の話です。

原始細胞の中で見た目は違いないですが、他より明らかに有利な特徴を持っているものが現れました。

それを本書ではマグナ・スペルステスと呼んでいます。

マグナ・スペルステスは厳しい環境で生き残るための遺伝子メカニズムを発達させていたのです。

そのメカニズムの回路は遺伝子Aから始まります。

遺伝子Aはいわば監督です。

環境の厳しい時にスイッチが入って細胞の分裂を停止させる役割を持ちます。

この回路には遺伝子Bも関わってきます。

遺伝子Bから作られるたんぱく質は「抑制」の機能を持っています。

環境が好ましい時に遺伝子Aが働かない様に「抑制」しています。

つまり遺伝子Bが働いていると細胞が増殖できるようになります。

自分の子孫が生き延びる確率が高い時だけに細胞が自らの複製を作れるようにしています。

ここまでは目新しいものではありません。

マグナ・スペルステスは遺伝子Bが変異を起こして別の役割も獲得しました。

その役割がDNAの修復です。

DNAが壊れると遺伝子Bから作られるたんぱく質が遺伝子Aから離れてDNAの修復を助けます。

抑制されていたたんぱく質が無くなるので遺伝子Aにスイッチが入ります。

DNAの修復が終わるまで細胞の分裂は停止してしまいます。

つまり一切の生殖はできなくなるのです。

これは理にかなっています。

DNAが壊れている時に生物が最もしてはいけないことが生殖だからです。

こうして原初の指令である。「増えよ!」という欲求に逆らうことで厳しい環境を乗り越えて進化を繰り返し、今の私たちが居ます。

重要なのはこの原初のサバイバル回路がどの生物にも備わっていることです。

この単純な回路ですが、実はこのサバイバル回路こそが老化の原因だったのです。



10年前の見解

10年前、老化に関する分野をけん引する研究者らは老化の原因について新しいモデルを打ち出しました。

「老化のたった一つの原因を突き止められないのはそもそもそんなものは存在しないからだ。」というものです。

老化も老化に伴う病気も老化の「典型的特徴」が組み合わさった結果であり、特徴は以下の通りだとしたのです。

①DNAの損傷によってゲノムが不安定になる。
②テロメアの短縮。
③タンパク質の恒常性が失われる。
④代謝の変化によって、栄養状態の感知メカニズムが上手く調節できなくなる。
⑤ミトコンドリアの機能が衰える。
⑥ゾンビのような老化細胞が蓄積して⑦健康な細胞に炎症を起こす。
⑧幹細胞が使い尽くされる。
⑨細胞間情報伝達が異常をきたして炎症性分子が作られる。

これらの問題に対処すれば老化を遅らせることができ、老化が遅ければ未然に病気を防ぐことができます。

これら全てに対処できれば平均寿命は延ばすことができるかもしれないですが、最大寿命は延ばせない可能性があります。

「この典型的な特徴が老化の症状を正確に表していることは間違いない、しかしそうした特徴がなぜ現れるのかが説明できていないのも事実だ。」と著者は語ります。

実はこの典型的特徴の上流に老化の原因があります。しかも唯一の原因です。

そうです。サバイバル回路です。



老化の情報理論

単純に言えば老化とは情報の喪失です。

DNAはデジタル情報です。

情報の保存やコピーを確実に行う事ができる点ではコンピューターメモリやDVDと基本的に変わりありません。

体内にはもう一種類情報が存在し、こちらはアナログ情報です。

このアナログ情報は「エピゲノム」と呼ばれます。

DNAによらない遺伝の仕組みを「エピジェネティクス」と呼びます。

太古の昔のマグナスペルテスや現代の細菌までエピジェネティクスは種の存続において必要不可欠です。

というのも私たちはたった一つの受精卵から出発し約260個の細胞を持つに至ります。

その細胞一つ一つ全てに同じ遺伝情報がしまわれているのに、それぞれの細胞は何百種類もの異なる役割へと分化します。

いずれの場合もそのプロセス全体を調整しているのがエピゲノムです。

エピゲノムが無ければ細胞は自らのアイデンティティを失ってしまうことになります。

注目すべきはエピゲノムがアナログ情報ということです。

劣化したアナログ情報は回復できます。

例えば古いDVⅮは傷がついて再生できないと思いますが、研磨することで再生できるようになります。

この研磨剤を見つければ老化に対しても対抗できると著者は語ります。

この研磨剤とは一体何なのでしょうか?



長寿遺伝子

著者の提唱する「老化の情報理論」はサバイバル回路から始まります。

この回路は進化しAとBだけの単純なものではなくなっています。

研究によると哺乳類では二十数個の関連遺伝子が見つかっており、これらを長寿遺伝子と呼んでいます。

その中でも著者が研究対象としている長寿遺伝子は

サーチュイン

と呼ばれるものです。

サーチュインはあの遺伝子Bの末裔です。

サーチュイン遺伝子から生まれるタンパク質が遺伝子のスイッチをオフにしたりオンにしたりしています。

サーチュインはエピジェネティクス的な調節機能において極めて重要な役割を担っています。

というのも細胞を制御するシステムの最上流に位置し、私たちの生殖とDNA修復を調整しています。

このサーチュインは進化の過程でNAD(ニコチンアミドアデニンヌクレオチド)を用いて仕事をするようになります。

本書では詳しく書かれていますが、このNADが加齢と共に失われることでサーチュインの働きが衰えます。

これが老齢に特有の病気を発症する原因の一つの考えられています。

このサーチュインはストレスにさらされた時に生殖ではなく修復を選ぶことで老齢に特有の病気から守ってくれています。

さらにはサーチュインを活性することでDNA修復が進み、記憶力が向上し、運動持久力が増し、太りにくくなることがマウスを用いた実験で証明されています。

サーチュイン以外にも長寿遺伝子はあります。

本書ではTOR、AMPKについて触れられています。

TORは複数のタンパク質からなる複合体で、成長や代謝を調節する役割をもちます。

サーチュインと同じように哺乳類でも発見されており、哺乳類ではmTORと呼ばれます。

サーチュインと同様の作用がありますが、その中でも古いタンパク質の分解が最も重要な役割を果たしていると考えられています。

TORが抑制されていると細胞はじっとしていなければならないので細胞内にある古いタンパク質を再利用します。

このプロセスをオートファージーといいます。

少し前に流行った「空腹こそ最強のクスリ」(青木厚著)という本ではオートファージを効率的に働かせる方法を紹介しています。

16時間空腹にするのがポイントなのですが、いずれcolumnで紹介することにしますね。

少し話が逸れましたがAMPKについてもサーチュイン、TORと同様に哺乳類にみられ、こちらは代謝の調節に関与しているようです。

これら長寿遺伝子は共通点があります。

お気づきの方も多いと思いますが、ストレスがかかると始動するという点です。

細胞が壊れない程度の適度なストレスが長寿遺伝子を働かせるコツになります。

運動、サウナ、寒冷刺激など詳細は後程、解説したいと思います。



遺伝子のスイッチを調節するエピゲノム

少し情報量が多くて疲れてきましたが、著者の提唱する「老化の情報理論」を理解するにはもう一度エピゲノムに立ち返る必要があります。

それこそがサーチュインが調節に一役買っている領域だからです。

先程も紹介したように私達を作る細胞には、すべて同一のDNAがしまわれています。

神経細胞や皮膚細胞の違いを作っているのは何なのか?

その答えがエピゲノムです。

生命活動を実際にコントロールしている割合でいえばゲノムよりエピゲノムの方が圧倒的に大きいです。

ゲノム、エピゲノムと話が複雑ですが、ピアノ、ピアニストの関係で例えられています。

ピアノ=ゲノム ピアニスト=エピゲノムです。

ゲノムがエピゲノムのできる事を決めています。

ピアノが無ければピアニストは演奏できません。

さて、優秀なピアニストが演奏をします。

素晴らしい音色が聞こえてきます。開始数分で少しミスをしましたが、気になりません。

再びミスが起こります。大したことではありません。

続いて一度、また一度ミスが起こり、ミスの間隔は短くなっていきます。

しまいには演奏は台無しになってしまいます。

ステージは混乱することでしょう。

忘れないで欲しいのはピアノには何の異常もありません。

エピゲノムも同じです。

ゲノムに異常が無くてもDNAが損傷したり細胞が大きく傷つけられたときにエピゲノムは大きく混乱します。

「老化の情報理論」によるとこれこそが老化の原因としています。

老化の典型的特徴もこの理論で説明できます。

だいぶ老化について詳しくなってきましたね。

眠たくなってきましたが、もう少し深堀していきたいと思います。

冒頭にも書いた通り、著者に言わせてみれば老化は病気というのです。

私は全く考えもしなかったですし、誰もが老いていくものだと思っていました。



老化という病気

老化は身体の衰えをもたらす。
老化は生活の質を制限する。
老化は特定の病的異常を伴う。

これだけの特徴をすべて備えているのだから、一個の病気と呼んでもいい気がします。

ただし一つだけ満たしていない条件があります。

「高齢者医療メルクマニュアル」によると、病気とは人口の半数未満がこうむる不調の事をいうようです。

老化は当然ながら誰にでも訪れるものです。

ではこのマニュアルは老化についてどう表現しているのでしょうか。

「外傷、疾病、環境リスク、あるいは不健康な生活習慣の選択といった要因がなくても時とともに臓器の機能が不可避的かつ不可逆的に低下すること。」

としています。

癌、糖尿病、壊疽などの病気で不可逆的で不可避など誰も言わないでしょう。

しかし、少し昔なら不可逆的だったのです。

老化も同じなのです。

49%の人がかかるものは病気、51%の人がかかるのは病気じゃ無いなんてこんなおかしな話はありません。

みんな知らないし、言わないから老化は当然だと思い込んでいます。

老化を病気と認めず、現代の医療はモグラ叩きを続けています。

一つの病気が現れたら他には何も存在しないかのようにその病気を治療します。

心臓病はあちら、感染症はこちら、皮膚病はそちら、という具合です。

実は個々の病気を治しても健康寿命は延ばせません。

20歳を超えると指数関数的に病気の発生率が上がっていきます。

20歳と70歳では致死的な病気の発生率は何と1000倍になるのです。

だから一つの病気を治したところで寿命自体にはほとんど影響を与えないのです。

これまでの説明で今すぐに老化を病気と認めるのは抵抗があると思います。

ここで老化を病気と認めるための思考実験を紹介します。

私は進撃の巨人の継承者なので未来を覗くことができます。

2028年、一人の科学者が新種のウィルスを発見します。

その名をLINE-1と名付けました。

やがて私たち全員がそのウィルスに感染し、両親から受け継いでいることが明らかになります。

しかも他の主要な病気のほとんどについてもこのウィルスが原因だったと判明します。

LINE-1はゆっくり進行する慢性疾患を引き起こします。

軽度の感染でもゆっくり着実に進行します。

2030年幸いにもワクチンが開発され新しい世代はワクチン投与により、両親より50年は長生きします。

後にそれが人類の本当の寿命だということが分かりました。

私が少し内容をいじりましたが、このような思考実験を紹介しています。

老化は病気だということを説明するためもう一つ思考実験を紹介していますが、そちらは本書を読んでみてくださいね!



まとめ/感想

いかがでしたでしょうか。

要約したつもりでしたが、私が本書を読んで受けた衝撃が大きく、ついつい長くなってしまいました。

それだけ、内容の濃い本となっています。

2週間程、本書を読みこんだのですが、辞書を持ち歩いているのかと思われるくらい厚い本です。

普段読書をしない人からすると読みづらさはあると思います。

でも読んでみてください。あっという間に読めます。

例えは非常に分かりやすく、詳細まで説明してくれています。

今回は「老化は病気だ。」と思考のパラダイムシフトを起こすところまで紹介しました。

次回は老化を治療するにはどうしたらいいのか。

というところを中心に紹介したいと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も楽しみにしていてくださいね!



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