FACT FULNESS

Book Column

ハンス・ロスリング著 2019.1

目次
第一章;分断本能
第二章;ネガティブ本能
第三章;直線本能
第四章;恐怖本能
第五章;過大視本能
第六章;パターン化本能
第七章;宿命本能
第八章;単純化本能
第九章;犯人捜し本能
第十章;焦り本能
第十一章;ファクトフルネスを実践しよう

読みやすさ★★★★☆
リハビリ関連度★☆☆☆☆
エビデンス★★★★★

「ファクトフルネス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この言葉は医師であり、公衆衛生の研究者である、著者ハンスロスリングによる言葉です。

著者の人生経験をもとに書かれた本ですが、莫大なデータを妻のアンナ、息子のオーラが分かりやすくまとめています。

ファクトフルネスとは何なのか?

それを知るために本書の冒頭で紹介されているクイズに挑戦してみましょう。

質問1;現在、低所得国に暮らす女の子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A20% B40% C60%

質問2;世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A低所得国 B中所得国 C高所得国

質問3;世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A約2倍 Bあまり変わってない C半分になった

質問4;世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?

A50歳 B60歳 C70歳

質問5;15歳未満の子供は、現在世界に20億人います。国連の予測によると2100年に子供の数は約何人になるでしょう?

A40億人 B30億人 C20億人

質問6;国連の予測によると、2100年には今より40億人人口が増えるとされています。人口が増える最も大きな理由はなんでしょう?

A子供が増えるから(15歳未満) B大人(15~75歳)が増えるから C後期高齢者(75歳以上)が増えるから

質問7;自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?

A約2倍 Bあまり変わっていない C半分以下

答えは1 C、2 B、3 C、4 C、 5 C、 6 B、 7 C

上記は本書の冒頭に紹介されている質問の一部ですが、正解はいくつありましたか?

全然答えられなかった人、安心してください。

世界のどれだけ優秀な人もこの質問には正確に答えられませんでした。アメリカでは正解率たったの5%です。

チンパンジーの正解率は約33%なのでチンパンジー以下という結果になりました。

では何故これほどまで正解率が低いのでしょうか?

頭が悪いからではありません。ただただ知識が不足しているだけなのです。

知識のアップデートができていないのです。

でも問題はそれだけではありません。

本書では「ドラマチックすぎる世界の見方」が問題だとしています。世界は良くなっていない、自然災害、人災、増え、どんどん物騒な世の中になっている。貧富の格差は拡大している。などの思い込みが正解率を低下させているとのことです。

「ドラマチックな世界の見方」は変えることが難しいと語られています。

その原因は脳の機能にあるからです。

本書では章ごとに脳の機能=本能をまとめています。

全部で10ある本能を理解したとき、ファクトフルネスについて知ることができるでしょう。

ではその本能を少しづつですが紹介していきます。

分断本能

「世界は分断されている」という思い込み。のことです。

例えば、先進国、発展途上国などという言葉は皆さんも一度は使ったことがありますよね?

この枠組みには先進国と発展途上国の間には分断があり、決して交わることがないように感じます。

しかし質問2を思い出してみてください。世界の人口で最も多いの中間所得国です。

でもいわゆる先進国に住む私たちには先進国に住む人たちは豊かで、発展途上国に住む人たちは貧しいと思い込んでいます。

このように世界は分断されているという思い込みが人間には本能的に備わっているという事です。

本書では分断分かりやすく説明するため、生活水準を4つのレベルに分けています。

レベル1;1日一ドルの稼ぎ、移動手段は徒歩、口にしたことがあるのは粥だけ。10億人


レベル2;1日の稼ぎはレベル一の4倍、毎日お金が3ドル余る。電気もいくら か通っていて、移動手段は自転車。 30億人


レベル3;一日の収入はまた4倍16ドル、水道管が引かれ、冷蔵庫も購入、移動手段はバイク、貯金もいくらかあり、家族で旅行に行ける。 20億人


レベル4;一日の収入は32ドル、移動手段は車、旅行は飛行機。皆さんはレベル4でしょう。 10億人

と紹介されています。大半はレベル2とレベル3の人たちです。

世界は分断されていません!

ネガティブ本能

「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み。

この章では質問3を思い出してみましょう。

極度の貧困にある人の割合は過去20年で半分に減少しています。

データがそう示しています。しかしこの事実を知っている人の割合はほとんどの国で10%未満でした。

質問4でも見たように世界の平均寿命は約70歳です。

世界はどんどん良くなっています。

本書では増え続けている16の良いこと、減り続けている16の悪いことを紹介しています。

とにかく世界は良くなっています。しかしネガティブ本能により、思い込みから抜け出すことができません。

ネガティブ本能とは物事のポジティブな面よりネガティブな面に気づきやすいという本能です。

ネガティブ本能を刺激する要因は3つあると本書には語られています。

1、あやふやな過去の記憶
2、ジャーナリストや活動家による偏った報道
3、「以前より良くなっている」と言いづらい空気

としてます。

ではどうすれば良いのでしょうか?

まずネガティブなニュースに気づくこと。良いと悪いは両立すること。良い出来事はニュースになりにくいこと。

ゆっくりとした進歩はニュースになりにくいこと。美化された過去に気を付けること。これを心にとめておきましょう。

直線本能

「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み。

この本能を語るうえで質問5を思い出してください。

子供の数は変わらないのですが、世界の人口がひたすら増え続けるという勘違いをしている人が多いようです。

なぜなら直線本能によるものだと本書では語られています。

確かに世界の人口は増え続けています。現在のグラフを見ると線の続きを勝手に予測してしまいます。

ではまずなぜ人口が増えたのか?

それは質問6を思い出してみてください。15歳から75歳の大人が増えるから人口が増えています。

これからしばらくはこの世代が増えるため、人口は増加します。

子供が多く生まれるから人口が増えているわけではありません。

ゲイツ財団では貧しい子供の命を救ってきましたが、「子供を助けたら人口が増え続け、地球が滅んでしまう。」といういちゃもんをつける人間がいるみたいです。

しかしこれもとんでもない勘違いで子供が生き延びやすくなると人口が減るという事実があります。

人口を増やしているのは極度の貧困です。貧困がなくなれば人口は減少していきます。

恐怖本能

危険ではないことを恐怖と考えてしまう仕組み。のことです。

みなさんが一番恐れているものは何でしょう?この質問をするとだいたい、蛇、クモ、高所、閉所が回答のトップとなります。

現在でもケガ、毒などの危険を予知すると恐怖本能が反応してしまいます。

一方メディアでは毎日のように、「身体的な危害」「拘束」「毒」に関するニュースを流しています。

レベル1、2にいる人にとってはこれらのニュースは理にかなっていますが、レベル3、4の人たちにとってはこの恐怖は足を引っ張ることとなってしまいます。

例えばレベル4の人の3%は何らかの恐怖症を抱えているそうです。恐怖症は抱えていなくても、誤った世界の見方をしてしまう可能性があります。

ではどうすればいいのでしょうか?

まずは「恐ろしいものには、自然と目が行ってしまう」ことに気づくことが重要です。

現実を見て、リスクを正しく計算しましょう。

本書ではリスク=危険度×頻度 としており、恐怖とは関係がありません。

行動する前に落ち着きましょう。パニックのまま行動すると判断を誤ってしまいます。

過大視本能

「目の前の数字が一番重要だ」という思い込み。

人はみな、物事の大きさを判断するのが下手くそであり、その原因は過大視本能が原因だとしています。

冒頭のクイズを見る限り、多くの人は「最低限の暮らしに必要なものが手に入る人は世界の人口の20%だけ」と考えているようです。

過大視本能を抑えるには「比較」「割り算」が重要だと本書では語られています。

「比較」は説明不要ですね。では割り算とはどういう事でしょうか?

例を見てみましょう。

赤ちゃんの死亡例についてです。1995年には1440万人の赤ちゃんが亡くなっています。

2016年には420万人にまで減少しました。もし生まれる赤ちゃんの数が、同じ期間に減り続けていたらどうでしょう?

数字が減少するのは他の関連する数字が減っているからという場合は少なくありません。

というわけで亡くなる赤ちゃんの数を、生まれた赤ちゃんの数で割ると1995年には9700万人の赤ちゃんが生まれ、1440万人が亡くなりました。

割り算をすると死亡率は15%ですそれに対して最近の死亡率は3%です。

一見440万人の赤ちゃんが亡くなっているというと莫大な数字に見えますが、割り算をして比較すると真の数字が見えてくるはずです。

そのままの数字だけでは大きく見えるかもしれません。

必ず疑ってかかり、他の数字と比較しましょう。

そして可能なら割り算をすることで正しい世界が見えてくるはずです。

パターン化本能

「一つの例がすべてに当てはまる」という思い込み。

人間は無意識のうちに物事をパターン化し、すべてをそれに当てはめてしまう。

これは人間が生きていく上で必要なことですが、必要ない時にパターン化本能が働くと世界の見方を歪めてしまうことになります。

本書ではパターン化はメディアの十八番だとしており、数々の誤解を生みだしています。

間違ったパターン化は思考停止につながり、あらゆる物事の理解を妨げます。

ではこの本能を抑えるにはどうしたら良いのでしょうか?

まず一つの集団パターンを根拠に物事が説明されていたら気づくこと。そのためには分類を疑うようにしましょう。

同じ集団の中にある違いを探しましょう。

たとえば分断本能で見てきたように発展途上国、先進国の大きな集団で見るのではなくレベル1~4のように細分化してみることが重要です。

宿命本能

「すべては初めから決まっている」という思い込み。

この本能もその名の通り、生まれ持った宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込みです。

進化の過程ではこの本能は役に立ってきました。違う環境に次々と自分を合わせるよりも、同じ環境に慣れ、それが続くと考える方が生き残りには適していたでしょう。

集団が特別な宿命を持っていると訴えれば団結しやすいし他の集団に対して優越感も感じられます。

しかし現代ではあまり役に立たないうえ、間違った世界の見方をしてしまいます。

ではこの宿命本能を抑えるには?

人も国も宗教も変わってないように見えますが、少しづづ変化しているということに気づきましょう。

そして知識を積極的にアップデートしましょう。

おじいさん、おばあさんに昔の話を聞くのも良いと本書では説明されています。

そうすることで今と昔の価値感が劇的に変わっていることを感じることができるでしょう。

単純化本能

「世界はひとつの切り口で理解できる」思い込み

シンプルなものの見方に私たちは惹かれます。

ぱっと閃いた解が他の者にも当てはまると思い込んでしまうのは良くあることで、そうすることで世界がシンプルに見えてくる気がします。

全ての問題はひとつの原因から生まれているに違いない!

そんな思い込みはセラピストであれば一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

世の中のさまざまな問題にひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう傾向を、単純化本能と言います。

そんな単純化本能を抑えるにはトンカチを叩くのではなく、工具箱を準備した方がいいと著者は語っています。

どういうことでしょうか?

詳しくは本書を読んでください(笑)

ここでは例を挙げてみます。

もし自分が肩入れしている考え方があるとすれば、それを肯定する例ばかり集めるのではなく、意見の合わない考え方を検証し、弱点を見つけることが重要です。

リハビリ業界ではありがちな話ですよね。

ひとつの理論だけではなく、様々な知識を集めることが重要だと思います。

それに自分の専門以外の分野を知ったかぶらず、知らないことがあると謙虚に認めることも大切です。

数字は大切ですが数字だけでもまた偏った世界のみかたをしてしまうこととなります。

上記の事を踏まえて単純なものの見方、答えには警戒していくことが必要です。

犯人捜し本能

「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み。

これも単純化本能に似ています。

何かが起きた時、単純明快な理由を見つけたくなる傾向が犯人捜し本能です。

人間は物事が上手くいかないと、誰かがわざと悪いように仕込んだように思いがちです。

良い場合も同じようにこの本能は働きます。

この本能のせいで、個人なり集団なりが実際より影響力があると勘違いしてしまいます。

でもたいていの物事は複雑で個人、集団の影響力はそこまで大きくないと頭に入れておきましょう。

この犯人捜し本能を抑えるにはどうしたら良いのでしょうか?

誰かが見せしめとばかりに責められていたらそれに気づきましょう。

犯人ではなく、原因を探すようにしましょう。

ヒーロではなく、社会を機能させている仕組みに目を向けよう。

と著者は語っています。

人間一人一人の影響力はそこまで大きくなく、社会の仕組みの一部です。

犯人を捜すよりも根本的な原因に目を向けていきましょう。

そうすることで正しいものの見方ができると思います。

焦り本能

「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み。

この本能は皆さんにもなじみがあるはずです。デパート、スーパーなどでよく見かける。「本日限定!特別セール!!」はこの本能を煽っています。

他にも車の商談の時に、「今決めて頂ければ安くしますよ。」と言われ、買ってしまった。という経験がある人もいるのではないでしょうか?

著者によると世界を歪める最も最悪な本能が焦り本能だとしています。

もしかしたら他の9つの本能も焦り本能に含まれるかもしれないとしている。

いつやるか?今でしょ!は焦り本能の典型例でしょうか?

この焦りはストレスのもとになり、逆に無関心になってしまいます。

なんでもいいから分析は後回し!行動あるのみ!と思い立ってしまったり。

自分にはできる事は何もない!諦めよう!と思ってしまったり。

どちらの場合も思考停止となり、本能に負けてしまっています。

ではこの焦り本能を抑えるにはどうしたら良いでしょうか?

「今すぐ決めなければならない」と感じたら今自分が焦っていることに気づきましょう。

深呼吸をして感情に流されないようにデータを見て判断する習慣を付けましょう。

そうすることで事実に基づいた(ファクトフルな)正解の見方ができるようになるはずです。

感想

この本は著者のハンスが亡くなる間際に執筆された本です。そして残念ながらハンスはこの本が完成する前に亡くなってしまっています。

ハンスはすい臓がん末期の診断を受けて、すべての仕事をキャンセルしました。

そしてこの本の執筆を始めます。息子のオーラによるとこの本の執筆がハンスにとっての希望だったと語られています。

ハンスが死の間際に何を伝えたかったのでしょうか?ファクトフルネスとは?

コラムの冒頭に書いたようにこの本を最後まで読むことでハンスの伝えたかったことが分かると思います。

事実に基づいた世界の見方を広めようと尽力したハンスの意志は共同著者である、オーラとアンナが引き継いでいます。

今回紹介したファクトフルネスはリハビリ関連度は低いですが、人生において重要な事を教えてくれます。

事実に基づいて世界を見る習慣をつけるためには10の本能を知ることが大切です。

この本能を抑えることで正しく世界を見ることができます。

このサイトにはぴったりな内容ですね。

このコラムでは10の本能について私的な解釈も交えつつ簡略化して紹介させていただきましたが本書ではさらに詳細な例を挙げ説明されています。

最初から最後までハンスの経験に基づいて本能の紹介がされているため非常に分かりやすく、読書初心者でもあっという間に読めてしまうと思います。

私の未熟な文章力では伝わりづらいことも多かったと思うので、ぜひ本書を読んで正しく世界を見る習慣をつけていきましょう。

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