進化しすぎた脳PART2

Book Column

皆さんお疲れ様です。

今回も進化しすぎた脳についてみていきたいと思います。

前回は概ね第三章までの内容を紹介しました。

今回は主に第四章の内容を紹介したいと思います。

では早速見ていきましょう!



神経細胞の結びつきを決めるプログラム

前回までの内容を少しおさらいしておきましょう。

脳内を細かく見ていくとシナプスというものに行きつきました。

神経細胞についても少し触れました。

そうやって微細な構造も重要だけど、複雑系にも目を向ける必要があるという話もしました。

神経は一つではなく集団になってはじめて意味を成します。

つまり相互作用が重要となってきます。

ではこの神経ネットワークはどのように形成されるのでしょうか?

実際には発達の段階で脳の神経はどこの神経と結びつきを持てばいいのかプログラミングされています。

神経線維は主に延髄と脊髄で交叉します。

これを交叉するようプログラミングをしている分子があり、この分子を作る遺伝子を破壊したネズミはどうなるでしょうか?

結果、ネズミはウサギの様にピョンピョンと歩いたそうです。

これは単純な話ですが、脳内の神経の結びつきが変わると全体的におかしなことになるということは容易に想像できると思います。



反回性回路

脳を単純なin/out装置として捉えてみてください。

自動販売機みたいにコインを入れてボタンを押したら飲み物が出てくる。

そういう単純な回路であれば一方向の情報で良いし、構造も簡単です。

インプットとアウトプットは一対一になります。

もしインプット、アウトプットが一対一ならば単調な結果しか出せないことになります。

これを一対一で無くするために必要な条件がフィードバックです。

日本語だと「反回性回路」「再帰性回路」と呼ばれています。

そしてこのフィードバックのループがもっとも多い場所が海馬のCA3野と呼ばれる場所になります。

その次が前頭葉で視覚野にも多いとされています。

出力、入力に直接関係していない神経回路の事を内部層といいますが、これは脳全体の神経の99.9%を占めるとされています。

それだけ情報処理に特化しているのが脳なんだなということが分かると思います。

それに関連して脳の100ステップ問題というものがあります。

脳が言葉を聞いて理解するまで遅い場合で0.21~0.5秒くらいかかります。

シナプスが情報を渡すのにかかる時間は1000分の1秒です。

ここから逆算するとシナプスを100回ほど介せば処理が完了してしまうのです。

たった100回のステップでこれだけ高度な事をやってのける脳はますます不思議ですよね。



脳のゆらぎ

前回のcolumnにも書かせていただきましたが、脳には身体が与えられています。

コンピューターと違って体は常に変化し、様々な感覚が立ち上がります。

そのため外部からの刺激を受け、絶えず変化し続ける必要があります。

脳の構造が外部からの刺激を受けて自発的に変化し続けることを脳の非エルゴード性と呼ぶそうです。

だから脳がすべて制御しているのではなく、身体が脳を支配しているというパラダイムシフトが生まれました。

2004年にネイチャーに出た研究論文の実験では大脳皮質視覚野の活動をフェレットという動物を用いて記録しています。

ごく普通の映画を見ている時の脳の活動。

砂嵐のような無意味な映像を見ている時の脳の活動。

真っ暗闇での脳の活動。

これらを比較するとあまり違いがなかったそうです。

厳密にいえば、暗闇では10%程度活動が低下するそうですが、せいぜい10%に留まりました。

つまり神経は外部からの刺激が無くてもフルに活動しているということです。

この自家発火を神経ノイズと呼びます。

車は動かさないけど常にエンジンをフル稼働させているようなものなので非効率に感じます。

大脳皮質に限って言えば、ノンレム睡眠の時が最も活発にニューロンが活動しています。

逆に起きている時は6~37%のニューロンしか活動していません。

非効率かどうかの視点で言えば、脳が一日に消費するカロリーは400キロカロリーだそうです。

電気代で言えば月額300円です。

意外と効率が良いんですね。

でもせっかくエネルギー効率が良くてもそのほとんどが自家発電で消費されています。

この神経ノイズは大きな意味がありそうですね。



じゃんけんでチョキを出すのはなぜ?

とっさにじゃんけんをする時、パーが一番勝率が高いですよね。

突然じゃんけんするとチョキを作るのが難しいためグーかパーを出す確率が高いからです。

なぜじゃんけんの話題を出したのかというと、意思決定の問題を考えてもらうためです。

なぜ、グーを出したのか?パーを出したのか?チョキを出したのか?

突き詰めていくと理由なんてないですよね(笑)

2005年サイエンスに載った論文ではヒルの意思決定について研究されています。

ヒルをシャーレの上でつつくと二種類の方法で逃げます。

這って逃げるか、泳いで逃げるかです。

著者らはこの意思決定に関係しているニューロンをくまなく探しました。

神経節8番にあるニューロンの活動を光学イメージング法を使って一斉に可視化しました。

最終的には208番のニューロンが泳いで逃げるか、這って逃げるかを決定しているということが判明しました。

ではこのニューロンがどうやって意思決定をしていたのでしょうか?

答えはイオンのたまり具合です。

脳の自発活動を神経ノイズと言ったりすると紹介しましたが、平たく言うと「ゆらぎ」です。

ニューロンの細胞膜のイオンもゆらいでいてそのゆらぎ具合で意思が決定されてしまうわけです。

ゆらぎの研究には続きがあってネイチャー神経科学に2006年に掲載された論文では簡単な暗記をしてもらい、それを解答してもらうことで正解と不正解を決定する因子を探そうと実験しています。

細かいことは割愛しますが、正解するか、不正解になるかはその問題の難易度ではなく、被験者の脳のゆらぎが決めていたということが分かりました。

これは以前のcolumnでも似たようなことを紹介しました。

自由意志錯覚という認知バイアスですね。

結局のところ自分の意志というものを辿っていてもそれはただの神経活動の結果でしかありません。

何回も書きますが、自由意志とは潜在意識の奴隷でしかありません。

なんかだんだん科学ではなく、哲学のような話になってしまいますね。

少し古い論文なので今では何か新しいことが分かっているかもしれません。

何かいい情報があればコメント欄から教えてくださいね。



感想

今回は脳科学について研究している池谷裕二先生の本を紹介させて頂きました。

本書は著者が高校生に対して講義しつつ、脳科学についてディスカッションしていくという内容でした。

本書の裏表紙にはこう書かれています。

「私自身が高校生の頃こんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」

著者自ら語る名講義がこの本には詰まっています。

私が一番惹かれたのは意識、自由意志についてです。

この本を読んで脳に対する見方が変わりましたし、読んでいたからこそ自己組織化理論についてもすんなり受け入れることができました。

本書の良さは何といっても読みやすいことです。

ページ数は多いですが、コンパクトで持ち運びもできるので隙間時間にお勧めです。

二回に渡って内容を簡単に紹介させていただきましたが、お伝えできていないことも多いので是非、本書を手に取ってみてくださいね!



comment

  1. hoooou. より:

    結局どうして じゃんけんでチョキを出すのでしょうか。 イオンの溜まり具合ということでしょうか。 考え始めたら難しいですね。

    • 林祐太 より:

      突き詰めるとそういうことになります。シナプスは繋がるべくして編成される部分がある程度決まってますが、ヘブ則によって学習される部分も大きいです。つまり活動電位が通りやすい部分はそれなりの神経ノイズが生じていると考えられます。
      だから意思決定については過去の経験も関係していると私は思ってます。

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