腸と脳part2

日々の業務お疲れ様です。

前回は腸と脳の第一部の紹介をさせて頂きました。

前回に引き続き、脳-腸-マイクロバイオーム相関について紹介していきます。

今回は直感と内臓感覚についてです。

嫌な事をする時、嫌な人と会話するとき、胃がキリキリすることがありませんか?

そのような内臓感覚は脳と腸が密接に連絡を取り合っている結果生じているのかもしれません。

そして案外その直感に従うことが良い結果を導いてくれるかもしれません。

では早速二部の内容を見ていきましょう。



幼少期の経験による影響

円満で保護の行き届いた家庭環境が子供の成長に良い影響を与えることは直感的に納得できます。

精神分析の登場以来、いがみ合いの絶えない家庭環境にて抑圧されて育った子供は精神疾患を起こしやすいと知られるようになりました。

最近になって幼少期のストレス体験が子供の脳に永続的な悪影響を及ぼす確固たる証拠が得られています。

一般人を対象とする大規模な調査からその種の脳の変化が、抑うつ、不安障害などのストレス障害やIBSなどの発症に寄与すると判明しています。

エモリー大学の神経科学者ポール・プロツキーとマイケル・ミーニーは動物実験で療育に長けたラットとずぼらなラットで比較をしています。

療育に長けたラットに健全に育てられたラットはストレスホルモンであるコルチコステロンのレベルが低いという結果が出ています。

また、成長ホルモンや脳の発達に不可欠ないくつかのホルモンが分泌されると確認されたとのことです。

その他にも母親が受けたストレスレベルと、成長した子供のストレス感受性に高い相関があったとする研究もあります。

著者の診療では幼少期に経験した逆境について報告する患者と面談を続けています。

その結果健常者の40%、IBS患者の60%がその種の報告をしているとしています。

更に著者らは幼少期~18歳までの間に逆境を経験した100人の成人健常者の脳画像を参照しています。

意外にも不安、抑うつ、消化機能障害などの症状を全く呈していない健常者にさえ脳の構造、周囲の危険や身体刺激の意味を評価する役割を果たす脳のネットワークの神経活動に変化が見られることが分かっています。

このいわゆるサリエンスシステムは状況を評価して良い結果、悪い結果を予測する際に、さらには直感的な判断を下す際にも重要な役割を担います。

この発見は脳が幼少期に経験した逆境に反応して再配線され、その変化が一生持続しうることを初めて示しています。

しかも健康な人にも変化が見出だされているので、特定の健康問題を伴うわけではないことが分かりました。

また、このプログラミングが世代間で受け渡される可能性があると本書では紹介されています。



ストレス下におけるマイクロバイオーム

幼少期の逆境やストレスが腸や脳、マイクロバイオームに甚大な影響を及ぼすということが分かりました。

オンタリオ州ハミルトンにあるマックマスター大学のプレミスル・バージックが率いるグループは最近の研究でぞんざいな療育が、脳のストレス回路の変化とともに、ストレスに対する腸の反応鋭敏化をもたらすとしています。

ぞんざいな療育を受けた個体は不安障害や抑うつに似た行動を示したと報告しています。

このグループの研究で分かったのはマイクロバイオータやそれが生成する代謝物質の変化が関係するのは「心理的な影響」のみで、ストレス感受性増大に関係するのは腸の反応性ということがわかりました。

更には子供が子宮内に居る時から母親が経験するストレスのレベルによってストレス、腸疾患、不安障害、うつ病に対する子供の脆弱性が変わる可能性があると紹介されています。

幼少期の逆境や生まれる前の母親の経験がこれらを左右するのであれば、一度発症してしまえば一生これらの症状と付き合っていくしかないのでしょうか?

安心してください!私達には大きく発達した前頭前皮質があります。

著者らは脳腸相関の障害に対して認知行動療法や催眠療法、マインドフルネスが効果的であると紹介しています。

認知行動療法やマインドフルネスのメリットは最小限の副作用で抑えられることです。

また、抗不安薬やSSRIなどの抗うつ薬を併用することで更なる効果を望めます。

SSRIは単独投与であれば30%程度の患者に対して有効であると報告されています。

これに加え、プロバイオティクスの摂取を推奨しています。



腸内微生物が脳を変える?

ある症例を例に紹介されているのは抗生剤についてです。

薬効範囲の広い抗生剤のジプロフロキサシンを2週間服用し、便が緩くなりましたが、プロバイオティクスの服用で改善しました。

その後鼻図まりと頭痛が生じたため、別の抗生剤を3週間服用しました。

すると腹部の不快感が生じ始めました。

ここまでは良くあることですが、この症例ではその後IBSの診断を受け、パニック障害も経験していました。

原因は抗生剤投与によるマイクロバイオータの構成変化です。

このマイクロバイオータの構成変化に関して情報をやり取りしているのが迷走神経です。

迷走神経が切断されたマウスではマイクロバイオータの構成が変化しても不安の減退が見られなかったとしています。

つまり、腸内微生物が不安を抑制する恒常的な流れを生み、迷走神経を介してその効果が脳に伝わるということを示しています。

既存の研究においてはある種の腸内微生物がGABAを生成することを示しています。

腸内微生物とGABAと脳機能の結びつきについては30年ほど前に病状の進行した肝硬変を抱える患者で観察されています。

肝硬変患者の心の状態、注意力は一般的に低下しており、彼らにGABAシステムを遮断する薬を与えると、認知機能や活力が向上します。

意外なことに薬効範囲の広い抗生剤投与によっても認知機能の改善が確認されています。

今日では腸内微生物の構成変化で腸内でより多くのGABAが生成されることで脳のGABAレセプターと結合し、認知機能や情動を司るシステムを抑制することが分かっています。

肝硬変のケースでは抗生剤の投与で腸内微生物の構成が変化し、GABAを生成する微生物の数が減り、脳内のGABAレベルが下がることで脳機能が改善したと考えられます。

これらの研究から不安障害に対してプロバイオティクスの摂取を推奨することで治療に生かすことが出来ないか、著者らは模索しています。

ですが、ここで疑問が生じます。

ヨーグルトなどに含まれるプロバイオティクス細菌がいかにして脳とコミュニケーションをとっているのでしょうか?

実はヨーグルトを摂取するだけではマイクロバイオータの構成は変化しないと言われています。

変えるのはマイクロバイオータが生成する代謝産物です。

マイクロバイオータの代謝産物が迷走神経を介して脳とコミュニケーションをとっていると著者らは考えています。

また、セロトニンを含有する腸細胞の関与も考えられています。

残念ながらこの辺はまだ研究段階のようです。



直感的な判断

第二章のテーマは直感と内臓感覚でした。

ようやく本題に入ります。

前回のコラムで腸にも味覚、嗅覚を感じる細胞が備わっており、感覚器として重要な役割を果たしていると紹介しました。

では脳はいかにして内臓刺激から内臓感覚を構築するのでしょうか?

腸とマイクロバイオームから送られてくるシグナルは腸壁に存在する無数のレセプターにコード化されています。

神経系、迷走神経、血流を介して島皮質に情報が送られます。

島皮質で情報が処理され、記憶、注意、感情など様々な要素と統合されます。

こうして内臓感覚が構築されますが、知覚されるのはわずかな部分のみとなります。

こうして蓄積された内臓感覚情報は障害を通じて経験してきた、無数のポジティブ/ネガティブな情動状態を反映します。

ある実験では自身の心拍数を正確に検知できる人は内臓感覚を感じ取りやすいことがわかりました。

また、内臓感覚に対する気づきが高ければ高いほど、情動に対する感受性が高いともいわれています。



直感細胞!?

1925年島皮質の右前部と関連構造にくるまれた特殊な細胞が発見されました。

発見者にちなんでフォン・エコノモ・ニューロンと呼ばれ、大型類人猿、鯨、イルカ、象以外の動物では発見されていません。

このニューロンは迅速な直感的判断を可能にすると考えられており、本書ではわかりやすく直感細胞と呼んでいます。

直感細胞は誕生の数週間前に脳内で出現し、誕生時には2万8千個、成人では約19万個となります。

直感細胞は右側で多く存在し、左島皮質と比較すると30%ほど多いと言われています。

この直感細胞を動員する高速コミュニケーションシステムは複雑な社会組織のもとで暮らすようになった哺乳類に内臓感覚に基づく判断を行う能力を付与したとしています。

直感細胞は社会的行動、直感、共感に関与していると考えられ、その異常が自閉症スペクトラム障害の生理学的要因の一つであるという説もあります。

まだ解明はされていませんが、この直感細胞の発達が誕生後数年間のマイクロバイオータの構成と機能変化、脳に送るシグナルの変化に関係している可能性は十分にあると著者は考えています。

脳と腸のコミュニケーションの変化が自閉症スペクトラム症に関与していることが知られています。

自閉症のマウスモデルを使った最近の研究では、腸内微生物と脳の間で送られるシグナルの異変が、自閉症のうような行動の主要因をなす可能性が示唆されています。



まとめ/感想

腸は莫大な情報を脳へ送っています。それは内臓感覚として経験や情動に結び付けられて脳に蓄積されます。

内臓感覚に触れること、それに基づく個人的な記憶が直感的判断に関与しうるということを十分に理解することが大切です。

更には食事や投薬などを通じて腸内微生物の活動に影響を及ぼすと、情動や未来に向けての姿勢も左右されると理解する必要があります。

著者はこの内臓感覚に基づく判断の重要性を考えると、この能力を鍛錬するための正式な方法がないのは不思議だと言っています。

残念ながら本書においてもこの能力の科学的な鍛錬方法は紹介されていませんが、本章で紹介した事実に対して十分な理解を得て、内臓感覚に耳を傾け、そのスキルの改善にエネルギーを費やすことができれば内臓感覚に基づいて判断する能力や傾向を高められるはずだとしています。

皆さんもプレゼン前に緊張して胃の痛みを感じたり、ストレスで腸の動きが速くなり便意を催したりしたことはありませんか?

それ以外にも様々な感覚通して、脳と会話し腸でで反応しています。

皆さんも日頃から内臓感覚に耳を傾けるようにしてみてはどうでしょうか?

重大な意思決定をする際にどうすればいいか腸が教えてくれるかもしれません。

今日はここまにします。

次回は脳腸相関の健康のためにできる事を紹介していきます。

ここまで読んでくださった方は腸はただの消化器官ではないことが理解できたと思います。

この複雑で素晴らしい機能の健康に保つためにどうしたら良いのか?

興味のある方は楽しみにしていてくださいね!

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。



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