腸と脳FINAL

Book Column

日々の業務お疲れ様です。

今回で腸と脳の紹介は三回目になります。

本自体のレビューはPART1を参照して下さい。

第一章ではマイクロバイオーム、マイクロバイオータについて学び、第二章では内臓感覚と直感について学んできました。

今回はこの素晴らしい機能の健康を保つためにはどうした良いか。

ということを見ていきたいと思います。

特に便秘に悩む人、腸が敏感な人は実践すると効果があると思います。

では、早速内容を見ていきましょう!



食の役割

過去二回に渡って脳腸相関の重要性を紹介してきました。

重要性は理解できたと思いますが、どうしたら脳腸相関の健康を保つことが出来るのでしょうか?

第三部ではそのことが書かれています。

本書ではヤノマミ族について紹介されています。

ヤノマミ族は数万年前の生活様式を現在でも維持する数少ない民族です。

著者は二ヶ月間ヤマノミ族の村で暮らしています。

そこでの食事生活を見てマイクロバイオータがいかに進化し、私たちの健康にどのように影響しているか手掛かりが隠されているとしています。

ヤマノミ族は高温多湿な森林に依存して生活しており、マイクロバイオームにも多様性が反映されています。

果物、野菜中心の生活で、調理に発酵の原理を利用し、自然が与えてくれる微生物の恩恵を受けています。

自然な発酵作用でアルコール飲料を作り、男たちはそれを大量に飲みます。

それによって行動が変化するのは私達と同じです。

「おそらくヤマノミ族は数世紀にわたる試行錯誤で、食物や薬草に含まれる特定のシグナルが腸と脳に影響を及ぼすということを学んだのではないか。」と著者は語っています。

では私たちが食しているアメリカ的日常食はマイクロバイオータにとって有毒なのでしょうか?

ワシントン大学のジェフェリーゴードンらの研究では典型的なアメリカ日常食が身についている人は先史時代的食生活を送る人々と比較して腸内微生物の多様性が30%ほど低下しているとしています。

どうやら野菜はしっかり食べ、マクドナルドに通うのは辞めた方がよさそうです。



すべてはどこから始まるか?

マイクロバイオータの形成に重要になってくるのが母乳です。

まだ母乳で育てられている子のマイクロバイオータを見ると炭水化物の消化を促すビフィズス菌と乳酸菌が多いことが分かりました。

固形食を全く口にしていない子供のマイクロバイオータは離乳食に対して準備を整えています。

生後数か月は数種類のマイクロバイオータしか宿っていませんが、2歳半頃までには生涯保たれるマイクロバイオームが形成されることが分かっています。

人類は赤ちゃんに腸内微生物の受け渡しをスムーズに行うべく、出産の際に産道を通ることで膣から微生物を受け取ります。

その後、母乳を飲むことでマイクロバイオータの成長を促していきます。

こうして新生児の段階ではわずかだった微生物ですが、2歳~3歳の間には多様性を持ったマイクロバイオータが完成されます。

母乳で育てられた子供を対象とする経年研究では、母乳を与える期間が長ければ長いほど、それだけ脳が大きくなることが報告されています。

更に言えば、母乳は子供の情動や社会関係に関する能力向上をもたらします。

現在の知見では腸内の代謝メカニズムに供給される母乳オリゴ糖の量と授乳期間の長さは脳と腸の発達プロセスに重大な影響を及ぼしているとされています。



食習慣とマイクロバイオータ

マイクロバイオータは食習慣にも影響を受けます。

植物性食物主体の食事に転換した被験者、動物性食物主体の食事に転換した被験者も短期間でマイクロバイオータの構成が変化します。

それまでの食生活をベースラインにして腸内微生物の増減がみられますが、基本的な構成は変わりありません。

欧米で生まれた人は欧米仕様のマイクロバイオータを宿していて、完全採食主義者となってもマイクロバイオータは雑食者のマイクロバイオータのままに留まります。

変わるのは微生物が生成する代謝物質です。

この事実が重要でカリフォルニア大学のロブ・ナイトによれば腸内環境にどんな微生物を宿しているかはそれほど重要ではないとしています。

こうしたマイクロバイオータの多様性のおかげで私たちが食習慣を劇的に変えても、分解する食物と生成する代謝物質を変えることで適応することができます。

結腸に宿る微生物は、分解されたアミノ酸をさらに多くの代謝物質へと発酵させ、生成された代謝物質は、神経系と相互作用を行います。

炭水化物のうち未消化のものは、結腸に宿る微生物によって酪酸、酢酸、二酸化炭素、メタン、硫化水素など短鎖脂肪酸へと代謝されます。

酪酸は脳腸相関の健康に資する有益な効果の典型です。

結腸壁を構成する細胞への栄養供給において重要な働きを担い、脳と腸の主要なコミュニケーションプレイヤーとなっています。

更には人口甘味料や高脂肪食が引き起こす低悪性度炎症の危険から脳を保護するプロセスで重要な役割を果たしています。

だんだん話が細かくなってきましたが、もう少しお付き合いください!



猛威を振るうアメリカ的日常食

日本でもよく食の欧米化が進んでいると言われています。

アメリカ的日常食に含まれるカロリーの35%以上が脂肪分に由来し、ほとんどが動物性脂肪です。

動物性脂肪を含む食事が、過食や食物依存を引き起こします。

一方で最近の研究によると動物性脂肪の含有量が少ない地中海式食事法はウエストのサイズ、新陳代謝、循環器系の健康に良いと言われています。

それだけではなく、ある種のがんやうつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病などの発症リスクを低下させると言われています。

人間や動物を対象に行われた研究で動物性脂肪の過剰摂取と脳疾患を含めた疾病の発症を結び付ける主要因の一つが低悪性度炎症と言われています。

腸を発端とする炎症は身体中に広がり、重要な脳の領域に達する可能性があり、このプロセスに腸内微生物が強く関与しています。

動物性脂肪の日常的な摂取は満腹に対する反応が鈍り、十分に食べたという感覚が損なわれると動物実験で明らかになっています。

脂肪分の多い食事を一度とるだけで腸は低悪性度炎症モードに陥る可能性があります。

しかし一度脂肪分の多い食事をとっただけでは脳の機能は損なわれることはありません。

日常的に摂取することは避けた方がよさそうです。



腸内微生物が食欲をコントロールする?

高脂肪食により低悪性度炎症が全身に波及する可能性を紹介してきました。

炎症分子の中にはサイトカインやグラム陰性菌の細胞壁の一部をなす、リポ多糖(LPS)と呼ばれる物質があります。

腸内微生物が腸の内壁を構成する細胞に近づくと、LPSを感知し、レセプターに結合します。

その結果、腸の内壁を構成する細胞を刺激してサイトカインが生成されます。

そのために腸は濡れやすくなり、腸内免疫は活性化されます。

サイトカインは血流を介して脳を始めとする各組織に到達します。

ひとたび脳に到達するとグリア細胞にアクセスし、グリア細胞が炎症細胞を産生します。

このような炎症作用によって視床下部の食欲をコントロールする中枢は腸や身体から送られてくる満腹シグナルに対する反応を損なうことになります。

このようなメカニズムで低悪性度炎症は引き起こされます。

これまで低悪性度炎症のメカニズムを紹介し、それが健康を損なう事が理解できたと思います。

では高脂肪食を避ける以外にどのような食物に注意すればいいのでしょうか?



避けるべき食品添加物

本書では低悪性度炎症を引き起こし、高脂肪食とあいまって身体と脳の健康を損なう食品添加物を紹介しています。

①人口甘味料
②食品乳化剤
③活性グルテン

これらの食品はダイエットペプシ、ソース、マヨネーズ、チョコレート、パンなどに普通に含まれています。

もし、便秘やIBSの様な症状が出ていたり、不安になりやすかったり、気分がふさぎ込みがちであればこれらの食材を摂らない様に注意した方が良いかもしれません。



マイクロバイオームの改善による健康増進の指針

本書の最後ではマイクロバイオームの健康のために何をしたら良いのかを示しています。

まず、マイクロバイオーム、マイクロバイオータの健康とは何なのでしょうか?

一つは多様性が挙げられます。

一般に認められているマイクロバイオータの健康基準のひとつは多様性とそれを構成する微生物の多さです。

多様性のレベルが高ければ回復力は高くなります。

微生物の種類が少ないと感染、粗悪な食事、投薬などによる攪乱に耐える能力が低下します。

二つ目は安定性です。

言われてみれば当然ですが、ストレスで攪乱を受けても安定性が高ければ、迅速に元の腸内環境に戻ることが出来ます。

安定性はマイクロバイオームに回復力を与えています。

これら二つを保てるように本書では10の指針が示されています。

①自然で有機的なマイクロバイオームを育成する
②動物性脂肪を控える
③腸内微生物の多様性を最大化する
④大量生産された食品、加工食品は避け、有機的栽培で育てられたものを食べる
⑤プロバイオティクス、発酵食品を摂取する
⑥妊娠時には栄養とストレスに留意する、、これは言うまでもないですね。。
⑦食べ過ぎない
⑧断食をして腸内微生物を飢えさせる
⑨強いストレスを受けている時、怒っている時、悲しい時は食べるのを控える
⑩皆で食事を楽しむ

以上になります。

columnを読んで下さった方は理由も何となく理解できると思います。

ここでは割愛しますが、さらに詳しく知りたい人は本書を手に取ってみてくださいね!



まとめ、感想

今回は3回に渡って腸と脳について紹介させていただきました。

本書を読むまでマイクロバイオータ、マイクロバイオームという言葉は聞いたこともありませんでした。

しかし本書を読み進めていくうち、今まで自分の腸に宿している微生物たちの偉大な役割に気づかされていきました。

医療従事者としてこの新しい知見は知っているべきだと思います。

脳と腸はこうしてcolumnを読んでいる今も会話を続けています。

今まで内臓感覚に耳を傾けたことのない人がほとんどだと思いますが、ぜひ自分の内臓感覚に耳を傾けてみてください。

過去に蓄積された内臓感覚が直感的にいろいろ教えてくれるかもしれません。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

次回は進化しすぎた脳という本を紹介する予定です。

この本もかなり内容の濃い本となっているので楽しみにしていてくださいね!



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