神経生理学の基礎を知るならこの本です。

Book Column
ゆたしゅう
ゆたしゅう

こんにちは

今回は神経に関する本の紹介になります。

新人PT
新人PT

神経ってなんか苦手意識あるんだよな~

ゆたしゅう
ゆたしゅう

その気持ちはめっちゃわかる!

けど神経系の知識は私たちの仕事をしている限りは必須だよね。

新人PT
新人PT

ですよね( ;∀;)

でもどこから学べばいいのかわからないんですよ

ゆたしゅう
ゆたしゅう

基本的な知識は生理学に載っている知識で十分だと思う。

だから今回はそのレベルの本を紹介するよ。

新人PT
新人PT

ありがとうございます!

何ていう本なんですか?

ゆたしゅう
ゆたしゅう

神経とシナプスの科学という本だよ。

杉 晴夫先生が書いた本で杉先生の専門分野は筋肉の収縮メカニズムについてだよ!

新人PT
新人PT

そうなんですね。先生の書いた本は難しそうだな。。。

ゆたしゅう
ゆたしゅう

大丈夫、杉先生はとても分かりやすく解説してくれてあるから。

それでは本の内容を見ていきましょう。

神経とシナプスの科学 初版2015年11月 杉 晴夫著

目次
第一章 電磁気現象と生体電気現象の同時発見
第二章 生体電気信号研究の黎明期
第三章 陰極線オシロスコープによる研究の進展ー日本人研究者の偉大な貢献
第四章 細胞膜を「流れないのに流れる」容量性電流の不思議
第五章 活動電位の謎に迫る細胞内微小電極法
第六章 マックスウェルの悪魔としてのイオンチャネルー活動電位のイオン機構の解明
第七章 活動電位の交通整理を行う「シナプス」
第八章 シナプスにおける電気現象の解明
第九章 シナプス研究の進展
第十章 現在までの脳機能研究の成果とその限界

読みやすさ★★☆☆☆
リハビリ関連度★★★★☆
エビデンス度★★★★☆



本書の前半は電磁気の発見と生体電気現象の発見について書かれています。

ガルバ二による生体電気現象の発見やボルタによるボルタ電池の開発。それに伴う研究の発展が書かれています。

内容としては非常に面白いですが、リハビリに関連するという意味では必要のない知識なので割愛します。

私が重要だと感じたのは第4章からです。

容量性電流という言葉を知っていますか?

この不思議な電流は私たちの細胞、神経で流れている電流の仕組みです。

ラジオやテレビなどの電気回路で使用される要素の一つとしてコンデンサーがあります。

コンデンサーは蓄電器とも呼ばれます。

仕組みは簡単で2枚の金属の板を短い距離を隔てて向き合わせたものです。

その間には電気的絶縁体が入っています。

あるコンデンサーが蓄える荷電の量(電気量)をQとしコンデンサーに加えられる電圧をV、コンデンサーの容量をCとすると次のような式となります。

Q=CV

コンデンサーにかかる電圧が高いほど、コンデンサーの容量が大きいほどコンデンサーが蓄えうる荷電の量は大きくなります。

コンデンサーの容量は極板の面積が大きいほど、また極板間の距離が短いほど大きいとされています。

容量Cのコンデンサーに電圧Vを加えると絶縁体で満たされているはずのコンデンサーに見せかけ上流れる電流が記録されます。

コンデンサーが蓄えうるQに達すると荷電がコンデンサーへ流入することは無くなり、見せかけ上流れる電流は止まります。

これはコンデンサーの中を電源部の電子が押し出されて極板へ向かうことであたかも絶縁体中を電気が流れたと同様の現象が観察されるという訳です。

この現象を容量性電流と呼びます。

この辺は複雑に感じますが、基本的な知識として知っておいてください。

細胞膜の電気容量

細胞もコンデンサーと同様で細胞膜は油であり、絶縁体です。

厚さはわずか5nmです。

つまり細胞は周囲を取り囲んでいる絶縁性の細胞膜により電気容量を持つのです。

一般に絶縁体のもつ電気容量の大きさは絶縁体をはさむ電気導体の距離が短いほど、面積が大きいほど大きくなります。

これにより細胞は小さいにも関わらず、蓄えられる電気容量が非常に大きくなります。



興奮の引き金となる容量性外向き電流

下の図に有髄線維を示します。

少々汚い絵ですが、ご勘弁願います(笑)

左側の神経線維(細胞)が興奮すると電気的二重層は消失し、右側に対して電気的に負となるので興奮部に局所電流が流れます。

これが細胞膜を外向きに流れます。

外側のプラス荷電が興奮部に移動し、細胞膜内側のマイナス荷電は、神経線維の内部を右側から左側へ向かって移動します。

従って興奮部から右側への電流となります。

これが跳躍電動の実態です。

絶縁体の髄鞘は実際に電気を通しませんが、容量性電流は見かけ上電気が流れているように見えるということを頭に入れておきましょう。

跳躍電動は有髄線維にのみ起こる現象です。

無髄線維と比較して興奮の伝わる速度が速く、神経系を維持するエネルギーの節約となります。

興奮の速度だけなら神経線維を太くすれば速くなりますが、莫大な量の神経線維を有する人の中枢神経系においてはエネルギーの節約も重要となってきます。

進化の過程で人類が有髄線維を得たことで多数のニューロンを持つことができ、中枢神経系が発達したと考えられます。

活動電位の交通整理を行うシナプス

神経を伝わるのは活動電位であることが明らかにされましたが、活動電位のみでは生体の多様な反応は説明ができません。

神経系には活動電位の伝わる方向を決める要素の存在が不可欠としてオックスフォード大学のシェリントンにより提唱されこれをシナプスと命名されました。

1873年にイタリアの解剖学者のゴルジは神経細胞を染色する方法を開発しています。

ゴルジ染色というやつですね。

ゴルジは個々の神経細胞は他の神経細胞と網目状の絡み合った構造であることを示しました。

これに対してスペインの解剖学者カハールは神経細胞は個々に独立して機能していると提唱しました。

神経細胞は細胞体、樹状突起、軸索からなると考え、これらを機能の最小単位と考えます。

カハールはニューロンの名付け親で、このカハールの考えが正しかったことは現在ではよく知られています。

シナプスも最初は二つの説で対立していました。

一つは電気説もう一つは化学説です。

電気説は電流を一方向にしか流さない性質である整流作用とイオンチャネルで説明されており当時の科学者からは圧倒的に支持されていました。

電気説は電流を一方向にしか流さない性質である整流作用とイオンチャネルで説明されており当時の科学者からは圧倒的に支持されていました。

電気説を簡単に説明してしまえばイオンチャネルによりニューロンからニューロンへ活動電位が生じるが、イオンチャネルの整流作用により電流は一方向にしか伝わらないというものでした。

これに対して化学説はシナプスに化学物質が関わっているという当時では大胆な考えでした。

薬理学者もこの考えにはためらっており10年近くこの説を公表しなかったとい話もあります。

しかしドイツの生理学者レーヴィの実験により化学説を支持する決定的な証拠を発見することになります。

実験の詳細は割愛します。

これに続いてイギリスのデールがクラーレを用いた実験で筋肉におけるアセチルコリンの関与を証明します。

クラーレはアフリカ先住民が矢毒として使用していたもので神経筋接合部のアセチルコリン受容体に作用して筋弛緩作用を示すものです。

こうして今となっては常識となっているニューロン、シナプスの詳細が明らかになってきました。

ここではもう少しだけシナプスの構造についておさらいしておきましょう。

シナプスの微細構造


ニューロン間のシナプスでは、一方のニューロン軸索(シナプス前線維)の末端部は髄鞘が無くなって細胞膜が露出して大きく膨らんでいます。

そこにはシナプス顆粒が多く含まれ、軸索末端の細胞膜と約20nmの距離を隔ててシナプス後膜があります。

生理学の授業で習ったと思いますが、神経筋接合部ではこれを終板と呼びます。

ちなみに終板では50nm神経と筋に距離があります。

細胞膜5nmと比較してはるかに大きな間隙があるのは進化の過程で電気的な仕組みによる信号を伝える仕組みを放棄したことを意味します。

なぜならシナプス間隙は高濃度の電解質を含む電気抵抗の低い細胞外液で満たされており、電流はもっぱらこのシナプス間隙を流れてしまい反対側の細胞に電流を伝えることができないからです。

ザリガニなどの甲殻類にある巨大神経線維には電気的に活動電を伝える電気シナプスが存在しますが、脊椎動物ではほとんど見つかっていません。

本書の中では終板電位の発見や抑制性シナプスの発見についても書かれていますが、ここでは割愛させていただきます。



まとめ

いかがだったでしょうか?

皆さんが知っていることばかりでしたか?

この業界に居ると新しい知見が出ては消え、いろんな治療法が混在しています。

ただ、ひとつ言えるのは生理学は不動の知識です。

今回紹介したエピソードの他にも数えきれない人たちの偉大な功績により蓄積された知識の結晶は揺るぎないものです。

理学療法士、作業療法士はまだまだ若い業界なのでいろいろな方法論が出てきて当たり前なのかもしれませんね。

これからの理学療法士、作業療法士業界を支えるのは若い世代のセラピストだと私は思っています。

ぜひ自分の考えを持って、成長していって欲しいと願っています。

今回は以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました!



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