疫病2020

門田隆将 2020.6

目次
第一章;飛び込んできた厄災
第二章;お粗末な厚労省
第三章;異変はどう起こったのか
第四章;告発者の死
第五章;怒号飛び交う会議
第六章;中国依存企業の衝撃
第七章;迷走する「官邸」「厚労省」
第八章;台湾の完全制御作戦
第九章;リアリストたちの反乱
第十〇章;「自粛」という名の奮戦
第十一章;武漢病毒研究所
第十二章;混沌政界へ突入
第十三章;中国はどこへ行く
第十四章;未来への教訓

読みやすさ★★★★★
リハビリ関連度★★★☆☆
エビデンス★★★★☆

この星を支配し続ける人類を脅かす最大の敵はウイルスである。

アメリカのウイルス研究の第一人者、ジョシュア・レダバーグが残した言葉です。

今年はこの言葉を噛みしめる年となりました。

今回紹介する本は新型コロナウィルスに関連する本です。

我々は現在進行形で世界的なパンデミックを経験することとなりました。

今もコロナ禍の真っただ中ですが、なぜこれほどまでに新型コロナウィルスが流行したのか?

武漢にて新型コロナウィルスの発生が確認された当時の日本政府の対策、専門家の意見はどうだったのか?

本書では新聞、著者のツィッターを基に振り返りつつ、後手、後手に回った政府の対応を痛烈に批判しています。

著者の怒りはどこから来るのか?

おそらく、私を含めたコロナ禍で生活するすべての日本国民は平穏な日常を失い、ぶつけ様の無い怒りを心の奥底で抱いているかもしれません。

本書を手に取ることでその怒りの根源がどこにあるのか知ることができるかもしれません。

飛び込んできた厄災

2020年1月16日。日本列島に新型肺炎が初確認されました。

ついに来たか。という気持ちでしたが、当時の私は危機意識が薄く、まさかここまで流行するとは夢にも思いませんでした。

しかし、著者は早くから深刻な事態と受け止めてツイッターに書き込みをしています。

というのも著者はこの時に台湾に滞在しており、日本に帰国したばかりだったとのことです。

その時すでに台湾政府は動いていたのです。

2019年12月31日には、台湾政府は武漢で原因不明の肺炎が流行している情報をキャッチして注意喚起、武漢直行便に検疫官が乗り込み検疫を始めていました。

年明けには中国人全員の検温を開始しています。

1月15日には法定感染症に指定し、検疫時に隔離措置がとれるようにしています。

空港ではほぼ全員がマスクを着けていたそうです。

その動きをみているからこそ著者は事態を重く受け止め、きちんと対応しないと大変なことになると考えたそうです。

一方、日本では危機感が欠如していました。私はその一人でした。。

1月12日付けの朝日新聞記事では

「肺炎の発生はすべて昨年12月8日から1月2日の間であり、3日以降新たな患者は出ていない」

「ヒトからヒトへの感染も確認されていない」

とメディア、専門家と称される人々は楽観論を振りかざしていました。

著者はこの記事を読んだ際に「正常性バイアス」という言葉を思い浮かべたそうです。

事態を悪い方ではなく、良い方に勝手に解釈してしまい、そう思い込む。

認知バイアスは無意識に働くのである程度は仕方ないのですが、専門家であれば、バイアスにかかることなく周りを俯瞰して判断して欲しいものです。

しかし、今回は「コロナウィルス=風邪ウィルス」という専門家ならではの先入観もあったのかもしれません。

専門家だけならまだしも厚生労働省も同じように楽観論が蔓延っていたとのことです。

そして政府の対応はというと1月21日に水際対策強化として武漢から航空機で入国する人に対して健康状態把握のための質問票を配布し、発熱等があれば自己申告するよう求めるとしました。

緩すぎます(笑)

中国人の善意にすべてを委ねてしまったのです。

中国版ツィッターの微博では解熱剤を飲み、質問票の咳と発熱の項にNOと書けば日本に入国できるとあっという間に広がったそうです。

日本政府は春節で訪れる70万人を直前でストップできませんでした。

インバウンドは日本経済を支える重要な柱だからです。

とはいえ質問票の配布するだけという対応はあまりにお粗末だと著者は語ります。

早期から中国全土からの入国禁止措置が採ることができていたら安倍首相は歴史に名を残す名宰相になっただろうと記されています。

お粗末な厚労省

1月26日、厚労省はホームページにて「新型コロナウィルスに関するQ&A」を公表しています。

武漢が閉鎖された三日後の事です。

病院で働く私たちは厚労省の情報をあてにしている事が多いです。

当時のホームページでは「ヒトからヒトへの感染の程度は明らかではありません。過度に心配することなく、風邪やインフルエンザと同様に、まずは咳エチケットや手洗い等の感染症対策を行う事が重要です。」

と書かれています。

1000万人を超える都市を封鎖に追い込んだウイルスに対して感染の程度は明らかでないとは危機感が欠如していたと言わざるを得ません。

厚労省は専門家と称される、楽観論者の意見を鵜呑みにしていました。

マスコミも似たような感覚に陥り「大変なことだ」と訴えている人は一部だったとのことです。

著者は「厚労省の官僚にとって国民の命など関係ないと思っている。」と痛烈に批判しています。

本書の中でも厚労省の不作為の罪について過去の事件を例に挙げて紹介しています。

その事件とは「薬害エイズ事件」「サリドマイド薬害事件」です。

有名な事件ですね。

サリドマイド薬害事件は1960年頃のドイツで手足に重い奇形のある赤ちゃんが数多く生まれるようになりました。

1961年11月、有名な「レンツ警告」が発せられましたが、厚労省は10ヶ月間この問題を放置しています。

「レンツ警告」とは「奇形の原因としてサリドマイドが疑わしい」とドイツのレンツ博士が警告したものです。

こうした不作為の罪について追及しながら、厚労省は時なら良いが、有事の際の組織ではないとしています。

こうしたウイルスがもたらす有事の専門家ではないのです。

そうした厚労省の目を覚ます事件が起きます。

2020年2月3日横浜港にダイアモンド・プリンセス号が入港しました。

水際対策の失敗は厚労省の危機感欠如から生じていましたが、この大事件でコロナウイルスの怖さと防疫の重要性を知ることとなります。

同時に厚労省に変わって活躍した人たちが居ます。

それが危機管理の専門家である自衛隊です。

自衛隊は生物テロへの対策ノウハウを持っています。

自衛隊はダイアモンド・プリンセス号に延べ2700人の隊員を派遣したが一人の感染者も出していません。

ちなみに厚労省は10人の感染者を出しています。

遅きに失した入国制限

台湾ではSARSの経験を活かし、早期から対策をすることができました。

ではなぜ、日本は中国からの入国制限をかけることができなかったのでしょうか?

足枷となったのは「習近平国賓来日」です。

コロナウィルスの対応がこれほどまでに後手に回った理由を突き詰めると必ず「習近平国賓来日」にぶつかると本書では解説されています。

そもそも日本から持ち掛けた話を外交礼儀上「やはりあれは辞めましょう」とは言えなかったのです。

最近では香港国家安全維持法の施行、デモの際にも人権を無視した姿勢。ウィグル人弾圧、尖閣諸島での不法行為など、国際社会的にも問題ですし、日本に対しても非友好的態度です。

一般人である私から見ても国賓として来日し、天皇陛下とグラスを交わすなどあってはならないことだと感じます。

政治家の中には思ったよりも親中派の人間がいることを頭に入れておこうと著者は呼びかけています。

しかし、世界的にも新型コロナウィルスが流行したため3月5日に日中両政府が国賓訪問を延期すると発表しています。

その三時間後にはようやく中国、韓国からの入国制限を発表しています。

しかし、新型コロナウィルスはヨーロッパでも猛威を振るうようになります。

3月18日イタリア、スペイン、スイスの一部地域及びアイスランドについて入国拒否対象地域に指定しています。

一方、台湾では「居留証所持者」以外の外国人の入国を拒否しています。

この日本の甘い対策が後の感染爆発につながるとしています。

ここでも東京オリンピックという足枷が存在していました。

官邸は欧米からの入国禁止は事実上、「東京オリンピックの開催を返上」と捉えられるのではないか。

そんな思いがあったとのことです。

逆ですよね。防疫に努めて安全な国と国際社会にアピールした方が説得力がありますよね。

日本はそうはならず、結局は安倍総理の高い外交能力で東京オリンピックの延期を勝ち取るわけですが。

その辺はさすが安倍総理!

ですが、この二つの足枷が国内での新型コロナウイルスを流行させることとなります。

変異するウイルス

新型コロナウィルスは変異の速いウイルスと知られています

最初に中国で発見されたウイルスから変異の度合いを見ていくとわずか2ケ月で2000種類近くのウイルスに多様化しています。

解析が進むにつれヨーロッパ型、アジア型、アメリカ型などに分かれていきました。

中でもヨーロッパ型が強毒化しており日本で流行しました。

だからこそ欧米からの全面入国禁止に踏み切れなかった政府の失策を本書では指摘しています。

それでも海外からしてみれば日本の死者数は圧倒的に少ない数字です。

なぜでしょうか?

BCG仮説など様々な説が議論されていますが、著者は日本の医療の質の高さ、国民皆保険を成し遂げた国だからこそこれだけの被害で済んだとしています。

中でもCTスキャンは世界屈指の保有台数でCTスキャンにより早期診断が可能となり、早期から最高の医療を受けられるとしています。

日本人は昔から平和ボケの民族です。

こうした有事の際は圧倒的な現場力で危機を脱してきました。

危機でこそ本領を発揮するのが日本人の国民性だと私は思います。

武漢病毒研究所

2020年2月6日有名な科学者向け情報共有サイトに一本の論文が投稿されました。

著者は肖波涛教授です。

論文のタイトルは「コロナウイルス起源の可能性」です。

その論文では以下の6点が主張されていると本書では紹介されています。

1、新型コロナウイルスは、キクガシラコウモリを宿主とするコロナウイルスと遺伝子配列が類似している。

2、コロナウイルスを持つコウモリは武漢には生息していない。

3、コウモリは市民の食用にはされず、しかも当該の海鮮市場では扱われていない。

4、海鮮市場から280メートルの距離にある「武漢疾病予防管理センター」はこの2年間でコウモリを湖北省から1554匹、浙江省から450匹捕獲し、DNA、RNA配列等の研究を行っていた。ここから出たゴミがウイルスの温床となった可能性がある。

5、海鮮市場から12キロに位置する武漢病毒研究所も同様の研究をしている。

6、新型コロナウイルスがキクガシラコウモリから中間宿主を経て人に伝染した可能性より、これら2か所の実験室から流出した可能性が高い。

論文の発表は大きかったのですが、これを中国当局が放置しておく訳もなくアップから数時間後に論文は突然削除されます。

本当に武漢病毒研究所、武漢疾病予防管理センターからウイルスが流出したのでしょうか?

鍵を握るのは「コウモリ女」です。

武漢病毒研究所の主任研究員の石正麗は研究者としてアメリカでも活躍しています。

上記の論文が投稿された3日後、石正麗は「中国に出現した新型コロナウイルスの分析」というタイトルで論文を投稿しています。

内容は難解なのですが、簡単に紹介すると新型コロナウイルスの発生源がコウモリである可能性が非常に高いとしています。

同時に武漢病毒研究所で扱っていたコウモリとは一致しないと訴えています。

更に5年前2015年ネイチャーメディシンに業界揺るがす論文を石正麗を中心とするグループが発表しています。

論文のタイトルは「人畜共通ウイルスの起源としてのコウモリ」です。

どこが問題になったかというと本書中に紹介されているので抜粋します。

「端的にいえば、コウモリのSARSウイルスを人為的に人間のACE2受容体と結合できるように操作したうえで研究したことが推測でき、これによってSARSコロナウイルスが再び感染拡大する可能性があるということを示したものだったからです。」

ヒトのACE2受容体は気管支に存在し、そこに結合できるようにコロナウイルスのSスパイクというたんぱく質の突起を組み替えて、感染力を持たせて実験したことがこの論文で読み取れるとのことです。

多くの研究者はこの論文を読んで危惧を抱いたということです。

また、この研究にアメリカは資金を提供していましたが、トランプ政権になってから研究費は打ち切られました。

これは何を意味するのでしょうか?

少なくともこの2つの施設から感染が拡大した可能性は否定できないのではないでしょうか。

他にも数々の疑念を紹介しています。

是非、本書を手に取ってみてください。

未来への教訓

米外交誌のフォーリンポリシーは日本のコロナウイルスの対応について冒頭にこう書いている。

「コロナウイルスとの戦いで、日本はすべて間違ったことをしてきたように思えた。」

PCR検査を受けた人は人口の0.185%で批判を受けてきた日本ですが、医療崩壊は起きず、感染者は減少しています。

死者数は人口10万人当たりで5人です。

アメリカ258人、スペイン584人ドイツですら94人です。

圧倒的数字です。

そしてフォーリンポリシーは考えられる理由として

他人を思いやる気持ちが強い文化

握手をしない風土

衛生意識の高さ

を上げています。

政府の政策は失敗に終わろうと、上記を武器にコロナ禍と戦ったのだと著者は語っています。

また、医療現場で絶やされることのなかった「笑顔」や圧倒的現場力が医療崩壊を回避したとしています。

感想

今回はジャーナリストの門田隆将さんの本になります。

政府、官僚の失策について台湾政府と比較しつつ追及し、医療現場での現場力を本書の中では讃えています。

また、武漢で流行したウイルスの根源はどこにあるのか?

中国の医師から情報を収集し推察しています。

いづれにしても今後の中国との付き合い方についても考えさせられる内容です。

リハビリテーションは病院や施設で働いてる人が多いと思いますので今回のコロナ禍で被害を受けたはずです。

なぜこのような世界になってしまったのか?

今だからこそ読みたい本です。

本書にはまだまだ伝えきれない知識、魅力がありますので是非読んでみてくださいね!

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