最高の脳で働く方法part1

Book Column

2019.5

デイビッド・ロック 著
矢島麻里子 訳

目次
第一章’;問題と解決
第二章;プレッシャー下でも冷静を保つ
第三章;他者と協力する
第四章;変化を促す

読みやすさ★★☆☆☆
リハビリ関連度★★☆☆☆
エビデンス★★★★☆



今回も脳に関連した本の紹介となります。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士ならある程度、脳科学について勉強しているはずです。

熱心に勉強している方もいると思います。

ただ、大抵の場合は患者さんの為に勉強しているように思います。

この本は最新の脳科学を自分にも汎化していきましょう。という本です。

脳に関する知識は恐らく皆さんが知っている事ばかりです。

少しばかり視点を変えてみることで、充実した仕事をすることができると思います。

ただ、この本は500ページ以上ある本です。

なかなか手が出づらい本でもあると思うので今回は何回かに分けて紹介したいと思います。

では第一章から紹介していきます。

メールの処理に忙殺される。

本書は仕事において陥りやすい状況をBeforeとAfterに分けて紹介しています。

Afterは脳の特性を知った後の対応を紹介しています。

まず紹介されているのはメールの処理に追われながら、様々な仕事をこなしている場面です。

リハビリ職もリハビリを行う以外にも厄介な仕事が多いですよね。

計画書、報告書、サマリー、カルテなど、、、思い出すだけで吐き気がします。

きっと書類に追われているのは私だけではないはずです。

こうした意思決定や問題解決に重要な機能を果たしているのは前頭前皮質です。

この前頭前皮質は意外な限界があります。

例えば、ハーバード大学卒業生の脳ですら、一度に二つの事をやろうとすると8歳児レベルの脳になりかねないと本書では紹介しています。

マルチタスクやデュアルタスクを否定する訳ではありませんが、このような事実があると認識しておくことは大切だと思います。

この前頭前皮質は物事を深く考える役割があり、自分自身が生み出している考えを保持する部位でもあります。

非常に大切な役割を担っているため、処理能力には限界があるということです。

また、前頭前皮質が上手く働くためにはすべてが「適度」である必要があります。

前頭前皮質にとって「適度」な状態にすること。それこそが、過多な業務をさばくために学ぶべきことだとしています。

意思決定、問題解決は限られたリソース?

前頭前皮質はブドウ糖や酵素などの代謝燃料を認識より速く消費します。

従って意思決定や衝動の抑制、問題解決能力は限られたリソースということです。

「難しい判断をすると次の判断はさらに難しくなる。」
「だが、こうした影響はブドウ糖飲料を飲めば緩和される。」とフロリダ大学のバウマイスター博士は説明しています。

疲れた時や空腹時に注意散漫になりやすいのはこれらによって説明できます。

最高の仕事を続けられる時間は限られています。

根性論でもっと頑張ることが必ずしも答えではない。と本書では語られています。

前頭前皮質の特徴が分かったところでどうすれば、日常に生かせるのでしょうか。

著者は以下の方法を提案しています。

まず、粉末のブドウ糖かコーラを飲むこと。

ただし糖尿病、虫歯のリスクが上がるため、おすすめしていません。

二つ目の方法は頭の中のリソースと価値を見直すこと。これが一番重要としています。

ではどのように見直すのかを紹介していきます。

1、優先順位付けを優先する
2、映像を活用する
3、物事を頭の外へ出す


1、は最も注意を要するものを先にこなしてしまうということです。難しい課題は先にこなしておく方が良いということです。

2、視覚化することで前頭前皮質の負担を軽減することができます。

3、は重要な事などはメモをするなどをして、前頭前皮質を温存しましょう。ということです。

結論としては優れた意思決定を行う能力は限られたリソースです。だから前頭前皮質を温存しながら働きましょう。ということになります。



考えるのに苦労するプロジェクト

二つ目のシーンでは概念書から提案書を仕上げる際の苦労を取り上げています。

時間に追われながら概念書に目を通し、提案書の期限が残り三十分となって、エクセルを立ち上げ、数式を設定し、、、、、

プロジェクトには情報が多すぎます。

先程、紹介したように物事を判断したり、決断する能力は前頭前皮質に制限されます。

シーン2では一度に扱う情報量の限界について追及しています。

頭の中にある舞台は思ったより狭く、一度に大勢の役者は舞台に上がれないようになっていると理解する必要があります。

この狭いスペースを最大限に利用するためには単純化、チャンク化が必要だと紹介されています。

そして舞台に上げる役者選びは慎重にした方が良いとしています。

大抵の場合、舞台に上がるのは一番最前列に居る役者(たまたま頭の中で思い浮かんでいただけ)であり、それが最も使える役者とは限らないです。

まとめると一度に記憶する情報は少ないほど良く、新しい概念は知っている事よりも舞台のスペースを多くとるという事実があります。

複数のアイディアを覚えておこうとすると記憶力も低下していくため、アイディアの特徴的な要素に絞って簡略化をし、チャンク化を利用しましょう。

一度に記憶するアイディアは欲張らず、3~4つまでにしましょう。

5つのことを同時にこなす

シーン3では前頭前野のもう一つの限界について言及しています。

それは一度に複数の情報の塊(チャンク)を記憶することができても、このチャンクを利用してパフォーマンスに影響を及ぼすことなく、同時に複数の意識的なプロセスを実行することはできません。

1、舞台を動かすには大量のエネルギーが必要で、
2、一度に一握りの役者しか舞台に上げておけず、
3、役者は一度にワンシーンしか演じられない

この三つの限界があるからだと説明されています。

意識的なプロセスは一つずつ行うべきだという考え方は1980年代以降、何百もの実験を通して研究されてきました。

科学者のハロルド・パシュラーは人が一度に二つの認知課題に取り組むと、ハーバードMBA取得者でも認知機能が8歳児並みに低下することを明らかにしています。

これは冒頭でも紹介しましたが、二重課題干渉と呼ばれる現象です。

また、二つの作業を同時に行うよりも二つの意識的な作業を同時に行う事の方がパフォーマンスが低下するという実験も紹介されています。

これだけの研究結果が出ているにも関わらず、仕事においては一度に複数の事をやろうとしてしまいがちです。

他にもこんな研究があります。ロンドン大学の研究によると常に携帯電話で常にメールやメッセージを送受信していると知能指数が平均10ポイント低下するといいます。

このように常時ONの状態でいることは生産的な働き方とは言えないとしています。

それどころかアロスタティック負荷と呼ばれるストレスホルモンなど切迫感に関する要素の数値を高めてしまいます。

そうならないためには反復作業を体で覚えることで大脳基底核にルーティンを引き継げばよいと説明されています。

結論としては二重課題干渉は避けるべきで、二つの意識的な作業を同時に行うとパフォーマンスは低下します。

そうならないためには反復作業をできるだけ体で覚えましょう。

そしてマルチタスクを行う必要がある場合、意識的作業と組み合わせるのは体で覚えたルーティンだけにしましょう。

ディストラクションにNOと言う

シーン4ではディストラクションがテーマになっています。

より効率的に働くには内外のディストラクションを管理する方法を学ぶ必要があります。

ディストラクションとは注意散漫要因のことです。

外的ディストラクションは至る所に存在し、ある研究で職場のディストラクションによって一日当たり平均2・1時間が奪われていると言います。

別の研究では現代のオフィスワーカーは平均11分で集中力が途切れてしまうと明らかにしています。

厄介に思えますが、外的ディストラクションを管理する方法はシンプルです。

それは考える作業をするときは全ての情報通信機器の電源を切ることです。

リハビリの最中は大丈夫そうですが、書類仕事の途中でスマホをいじりたくなる欲求は誰にでもあると思います。

効率的に働くためには電源を切りましょう!

次は内的ディストラクションです。

こちらの方が厄介なディストラクションで私たちが向き合うディストラクションのほとんどがこちらです。

思春期と共に自分の内面に意識が向くようになると心のコントロールの難しさに気づきます。

あちこちに気が散るし、妙な考えが頭に浮かんだり、、、

こうした傾向には理由があり、周辺神経活動がその原因の一つとされています。

周辺神経活動とは脳の中で神経系が絶えず数兆にのぼる接続を処理、再構成、再接続していることを示す言葉です。

ある研究によると、人が一つの事を集中して考える時間は、平均してわずか10秒であり、すぐ別のことに思考が移ってしまうといいます。

マサチューセッツ工科大学の神経学者らによると注意がそれると作業内容に関わらず、パフォーマンスは低下し、内側前頭前皮質が活性化することが明らかにされています。

内側前頭前皮質は自分や他人のことを考えるときに活性され、デフォルトモードネットワークの一部とされています。

外的集中力を失うとこのデフォルトモードネットワークが活性化され自分の悩みなど内部信号に注意が向いてしまいます。

前頭前皮質は脳全体のわずか4%であり、意思決定を司る前頭前皮質は心のコントロール一定の影響力がありますが、残りの脳部位の方がはるかに大きく力強いです。

上記の事が示唆するのは前頭前皮質と脳の他の部位を結ぶネットワークを強化することが重要ということです。

ディストラクションはなかなか手ごわいですが、いかに集中力を保つのではなく、いかに不適切なことに注意を向くのを抑えるかに力を入れることが大切です。

ではデストラクションを抑えるにはどうしたら良いでしょうか?

前頭前皮質には腹外側前頭前皮質(VLPFC)があります。

この部位があらゆる抑制に関与していることが様々な研究によって示唆されています。

ブレーキシステム自体が前頭前皮質に備わっているわけですが、それ自体が問題だと著者は指摘しています。

深刻な影響として挙げられているのはブレーキをかけるたびに、ブレーキの力は低下していくということです。

ここでも意思決定は限られたリソースだということが強調されています。

カリフォルニア大学のベンジャミン・リベットによる研究では自由意志は存在するか否かを明らかにしようとしています。

以前、自分では気づかないココロの盲点で紹介しましたが、この研究でも自由意志とは存在しないとしています。

しかし拒否権はありそうだとしています。自由拒否権があるというわけです。

何かしたい!という衝動が起きてもそれを行動に移さない選択が私達にはあります。

拒否権を行使するには自分の心に注意を払い、衝動が生じたことを察知することが必要不可欠となります。

結論としてはディストラクションを抑制するために、通信機器の電源を切り、外的ディストラクションを抑制しましょう。

内的ディストラクションを抑制するのは難しいですが、衝動が生じたら拒否できるよう自分の心の変化に注意を払いましょう。

腹外側内側前頭前皮質に存在するブレーキシステムはあらゆるものを抑制しているため、様々な方法でブレーキをかける練習をして、脳のブレーキシステムを向上させていきましょう。(前頭前皮質以外の部位とのネットワーク強化)

感想

今回は一章をまとめてみました。

こうして書いてみてもかなりの情報量です。

このコラムを書くのに夜な夜なブドウ糖を何回も摂取してしまいました(笑)

というわけで、本書は読みずらいかもしれません。

リハビリ関連度もそこまでありませんが、仕事という面では同じと捉えて良いと思っています。

実際、私は本書を読んでから意識が変わりました。

本書に出会ったおかげで前頭前皮質に過剰な期待をせずに働くことができるようになりました。

エビデンスの面では豊富な研究が紹介されていますし、新しい本なので高めにしました。

ただ、出典が不明な研究もあるので注意してください。

第一章は前頭前皮質がメインの話でした。

短くまとめる予定だったのですがまたしても長文になってしまいました。

次回は第二章の紹介をしたいと思います。

テーマは「プレッシャー下でも冷静を保つ」です。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。 



comment

タイトルとURLをコピーしました