新型コロナ7つの謎

2020.11
宮坂昌之著

目次
第一章;風邪ウィルスがなぜパンデミックを引き起こしたのか
第二章;ウィルスはどのようにして感染・増殖していくのか
第三章;免疫VSウィルス なぜかくも症状に個人差があるのか
第四章;なぜ獲得免疫のない日本人が感染を免れたのか
第五章;集団免疫でパンデミックを収束させることはできるのか
第六章;免疫の暴走はなぜ起きるのか
第七章;有効なワクチンを短期間に開発できるのか

エビデンス度★★★★☆
リハビリ関連度★★★☆☆
読みやすさ★★★★☆

皆さんお疲れ様です!!

暖かい日が増えてきましたが、花粉症にはつらい時期がやってきましたね。

さて、今回紹介する本は新型コロナウィルスに関連した本です。

今となってはニュースで新型コロナについて取り扱わない日は無いですが、よく耳にする「集団免疫」という言葉説明できますか?

私は何となくでしか知らなかったのですが、本書を読むことでやっと理解することができました。

というか、恥ずかしいことに勘違いしていました(笑)

他にも日本人はなぜ、重症化する割合が低いのか?

BCG仮説について説明されています。

また、人の免疫について、パンデミックとは何なのか?

といった基本的な知識の説明もされています。

そして本書は7つの章で構成され各章で新型コロナウィルスに関する謎について迫っています。

それでは内容を少し覗いてみましょう。

パンデミックとは

まずは感染症に関する基本的な知識をおさらいしておきましょう。

感染症には1類~5類感染症や指定感染症、新感染症など感染症法で分類されています。

また、新しく出現した感染症を新興感染症と呼び、もともと存在していたけど急激に増加したものを再興感染症と呼びます。

新興感染症;エボラ出血熱、エイズといったものが代表的です。
再興感染症;デング熱、狂犬病、日本脳炎などです。

新型コロナウィルスは新興感染症です。

新しい感染症なのですがSARSコロナウィルスに似ていることからSARS COVID-2と名付けられました。

当初は武漢が震源地とされていたため武漢肺炎などと呼ばれていましたが、地名を入れると差別に繋がるなど理由から正式にはCOVID-19と名付けられました。

SARS COVID2が引き起こすCOVID-19ということになります。

次にパンデミックについて整理しましょう。

パンデミックに似た言葉でエンデミック、エピデミックという言葉があります。

エンデミックは特定の地域限定で流行することです。

エンデミックが進行して特定の社会、共同体で広がるとエピデミックという表現に変わります。

エピデミックでは突然、国や地域を超えて感染が広がることもあります。

そしてパンデミックは複数の国や大陸を超えて拡散し世界的に大流行することを言います。

歴史的にパンデミックは繰り返し起こっています。

日本では奈良時代に天然痘がかなり流行したとされています。

一番有名なのはスペイン風邪ですね。

H1N1という型のインフルエンザが病原菌となって世界的に大流行し、推定死者数は5000万人です。

とんでもない数字ですね。

ではパンデミックの原因は何なのでしょうか?

さまざまな要因がありますが、一つは環境の破壊と言われています。

環境破壊により自然動物と人間の距離が近くなってしまうのです。

例えばエイズはアフリカの森林にいるサルに起源があるとされています。

また、SARSはコウモリに起源があるとされています。

今回の新型コロナウィルスもコウモリが起源とされています。

近年心配されているのが地球温暖化による永久凍土や氷河が溶けることにより未知の細菌やウィルスが出現する可能性があります。

マンモスが絶滅した理由の一つとして細菌やウィルスの感染が挙げられています。

これが事実なら未知の病原体が見つかる可能性もあり、今後注目する必要があります。

これらに加えてパンデミックが起きる大きな要因にウィルスの変異が挙げられます。

キーワードは「抗原シフト」「抗原ドリフト」です。

抗原シフト・抗原ドリフト

まず抗原シフトから説明します。

例えば複数のインフルエンザウィルスが体内に侵入し、一つの細胞を乗っ取ります。

すると複数のインフルエンザで一つの細胞を乗っ取るためミックスされて全く新しいインフルエンザの雑種が出来上がります。

新型のウィルスには免疫を持っていないことがほとんどなのでパンデミックが生じてしまうということになります。

これが抗原シフトのメカニズムです。

インフルエンザにはH型とN型という突起が存在し、その組み合わせで亜型が決まります。

抗原シフトではこれらの型のどちらか一つが変異します。

これに対して抗原ドリフトはより小さな変異によるものです。

遺伝子は変異するたびに一定の確率で変異が入ります。

特にインフルエンザの場合RNAポリメラーゼに変異を修復する機能が欠けています。

このため遺伝子配列に変異が起こりやすく、ウィルス粒子上にアミノ酸の変異がしばしば入ることになります。

抗原ドリフトの変異は小さいのでH型、N型タンパク質の構造自体は保たれます。

しかしウィルスの抗原性は変化することがありこれによりワクチンが効きにくくなるということが起きます。

これが抗原ドリフトのメカニズムです。

これが新型コロナウィルスでも生じているのです。

新型コロナウィルスはエキソヌクレアーゼExoNという酵素を持っているため変異が入る頻度は少なめとのことです。

最近、頻繁に言われている変異種というのは抗原ドリフトによって生じたものです。

それでも抗体が効かなくなるほど恐ろしい変異株では無いようです。

ざっくりまとめると以下の様になります。

一つ目の謎;風邪ウィルスがなぜパンデミックを起こしたのか?

A;環境破壊により動物と人間の距離が近づい未知の病原体にさらされる機会が増えている。

 また、抗原ドリフトでウィルスの変異が生じ、パンデミックへと発展した可能性がある。

細菌とウィルスの違い

さて、話が進んでしまいましたが、ここでウィルスと細菌の違いをおさらいしましょう。

ウィルスは大きさ0.1マイクロメートル以下で通常電子顕微鏡でないと見れない。

生命最小の単位である細胞は持ちません。

DNAかRNAからなる粒子なのです。

つまり自分でエネルギーも蛋白質も作れないので宿主の細胞に入り込んでエネルギーやタンパク質を利用して活動を維持します。

一般に抗生物質は効かず、一部の抗ウィルス薬が効きますが基本的には宿主の免疫でウィルスを排除するしかありません。

それに対して細菌は1個の細胞からできている単細胞生物です。

細胞膜を持っていますが、DNAは核膜に包まれておらず、ミトコンドリアやゴルジ装置は持っていません。

しかし自分自身で分裂、増殖することができます。

多くは抗生物質が効きますが、近年では耐性菌の問題がよく議論されているところです。

ウィルスが宿主細胞で増殖する仕組み

ウィルスは多くの場合特定の臓器、細胞に感染します。

例えば、インフルエンザウィルスは気道の上皮細胞に感染します。

B型肝炎ウィルスは呼吸器系には感染せず、肝臓に感染します。

新型コロナウィルスは気道の細胞と血管内皮細胞に感染することが分かっています。

ウィルスは自身の突起を特定のレセプター(鍵穴)に結合することで細胞に侵入するのです。

先程、説明したH型タンパクがまさに突起の一つでこれが変異することで細胞への侵入の仕方も変わってきます。

そうすると前年まで上手く働いていた免疫が機能しないということが起こるのです。

新型コロナウィルスの場合はSタンパク質という突起が出ていてACEⅡという受容体に結合して細胞に侵入します。

ACEとはアンジオテンシン変換酵素のことで、ⅠとⅡがあります。

いずれも血圧の調整に関わっていますが人ではACEⅡは副次的な役割しかないとされています。

ウィルスがACEⅡと結合するとウィルスの粒子が細胞へ侵入し、RNAの翻訳、複製がされ、ゴルジ装置、小胞体で新たなウィルス粒子が作られます。

そして細胞外に放出され、近傍の細胞が次々と感染していきます。

RNAの中にはウィルスの合成に関わらない非構造タンパク質があるのですが、これが問題なのです。

これがⅠ型インターフェロンを作るのを邪魔するのです。

なぜ、大変なのかというと感染して最初に起こる反応がⅠ型インターフェロンを含む種々のサイトカインの産生だからです。

こうして新型コロナウィルスは免疫から逃れるためにインターフェロンを封じ込めているのです。

そうして感染した細胞はウィルスが増殖し細胞死を引き起こします。

死んだということはウィルスに負けたと思うところですが、実はこれも感染を抑える重要な手段なのです。

例えば細胞の中でウィルスが増えすぎるとアポトーシスと言って遺伝子に組み込まれたプログラムが発動し、細胞が死ぬこととなります。

この場合は跡形もなく細胞が消えてしまうので炎症は起こりません。

一方ネクローシスという反応もあります。

ネクローシスの場合は細胞膜が破けてしまうため炎症反応が起きます。

この反応で白血球を呼び込んでウィルスを排除します。

ウィルスはアポトーシスを邪魔するメカニズムを持つものがあり、それを回避するためにアポトーシスとネクローシスの中間のような細胞死をするメカニズムもあります。

それをネクロトーシスと言います。

これらを巧みに駆使してウィルスとの攻防戦を繰り広げているのです。

二つ目の謎;ウィルスはどのようにして感染・増殖するのか?

A;ウィルスの突起がレセプターに結合し細胞に侵入する。

 細胞の機能を利用してウィルスが増殖し、近傍の細胞へ感染を続ける。

 ウィルスの中にはⅠ型インターフェロンなどを阻害して免疫を逃れるメカニズムも存在する。

抗ウィルス剤の働く仕組み

ウィルスの感染する道筋が分かれば、その道筋を止めることによりウィルスの増殖・拡散を防ぐことができます。

ワクチンはウィルスの細胞への侵入を防ぎます。

その他にもACEⅡ阻害薬などが挙げられます。

これに次いで話題になったアビガン、レムデシビルはウィルスの遺伝子増幅とウィルスタンパク質合成を防ぎます。

有効性が示唆されている抗HIV薬はウィルスの機能発現に必要なタンパク質を阻害(プロテアーゼ阻害)するように働きます。

現在も新たな抗ウィルス剤の開発が進んでいます。

今後の成果が楽しみですね。

二段構えの防御機構

二つの謎が解き明かされたところで人間の免疫についてももう少し知っておきましょう。

人間の免疫は簡単に言うと二段構えの防御体制が構築されています。

一段目は自然免疫です。

二段目は獲得免疫と言われています。

体表面には物理的・化学的バリアがあります。

例えば皮膚の角質、気道や腸管の粘液、唾液、涙などが挙げられます。

これらで病原体が防げないと①細胞性バリアーが働きます。

侵入した病原体に対して種々の白血球が殺菌性物質を放出し食べてしまいます。

ここまでを自然免疫と呼びます。

自然免疫は反応が速く、病原体を記憶する免疫記憶は持っていません。

そのため入ってきた病原体はなりふり構わず殺します。

それでも病原体を殺しきれなかった場合は②細胞性バリアーが働きます。

今度は白血球の中でもリンパ球が主役です。

Bリンパ球とTリンパ球です。

これら二つは記憶を持ち、Bリンパ球とTリンパ球の領域展開内に病原体が入るとその病原体により活性化されます。

B細胞の場合は抗体を作ります。(液性免疫)

T細胞はキラーT細胞を活性して感染した細胞を殺します。(細胞性免疫)

これを獲得免疫と呼びます。

原則として自然免疫が働き、次に獲得免疫が働きます。

自然免疫が上手く働くと獲得免疫が働きやすくなります。

というのも食細胞が細菌を貪食すると同時にサイトカインを放出します。

これが自然免疫と獲得免疫の対話をする仕組みになっています。

両方独立して働いている訳ではなく、相互に作用しあっているのです。

ちなみにこのサイトカインですが、様々な種類がありますが、異物が侵入して放出されるものは炎症性サイトカインと呼ばれています。

よく知られているものにTNFα、インターロイキン6、インターロイキン1、インターロイキン18などがあります。

また、抗ウィルス作用があるものはⅠ型インターフェロンが挙げられます。

これらサイトカインは周囲の細胞を活性化してリンパ球に作用して獲得免疫の働きを増強します。

サイトカインは自然免疫と獲得免疫の潤滑油として働いているのです。

ウィルスによる感染症状の違い

ウィルスが呼吸器系に感染するといわゆる風邪症状がみられるようになります。

いずれも自然免疫の反応として作られるⅠ型インターフェロンや炎症性サイトカインによるものです。

このサイトカインが血流にのって脳に達してプロスタグランジンという物質を作らせます。

プロスタグランジンは視床下部にある体温調節中枢に働き全身的に発熱を誘導します。

このとき、末梢血管が収縮するので局所的に体温が下がり、寒気がします。

したがって熱があるのに寒気がします。

これに対して熱を上げるため筋肉が震えて「戦慄」という症状が起きます。

面白いことに体温が上がると炎症性サイトカインの産生量が増え、免疫細胞は活性化されます。

炎症性サイトカインは風邪症状のもとなのですが、生体の防御反応を高める働きもしているのです。

ところが新型コロナウィルスはこれとは明らかに様子が違います。

感染症状が無い人が半分くらいいて、無意識に感染をひろげてしまっています。

この原因の一つとして新型コロナウィルスはⅠ型インターフェロンが上手く作られないことがあるようです。

複雑なメカニズムですが、簡単に言うと

ウィルスが作るたんぱく質がⅠ型インターフェロン遺伝子の活性を抑制する働きがあるようです。

ウィルスは自らの保身、拡大のために巧みな手口を使っています。

自分たちの体の中でこんなに細かいことが起きてるなんて信じられないですよね。

症状の違いは新型コロナウィルスではⅠ型インターフェロンの産生を阻害すること出ていると考えられますが、そもそも免疫には個体差があります。

なぜ、免疫は個体差が生じてしまうのでしょうか?

免疫反応の個体差

自然免疫と獲得免疫についてみてきましたが、この両者にはかなり個人差があります。

なぜ個人差が生れるのかというと

①免疫反応は訓練によって強化できる
②HLA型の違いがある。

この二つが挙げられます。

①は自然免疫に免疫記憶はないものの訓練で反応を強くすることができます。

そのいい例がワクチンです。

ワクチンを頻繁に受けている学童は獲得免疫に加えて自然免疫も強化されます。

なぜかというとアジュバンドという免疫強化物質が入れてあるからです。

②HLAにはクラスⅠ分子とクラスⅡ分子があります。

クラスⅡ分子は抗原提示細胞と言われています。

樹状細胞などで病原体を取り込んだら、HLAがT細胞に抗原を提示します。

ところがHLAも全ての病原体に反応できるわけではありません。

また、提示されたリンパ球も1種類の抗原しか認識できません。

これはT細胞でもB細胞でも同じです。

抗原と出会えたリンパ球だけが増殖して数が増えます。

新型コロナウィルス反応性のリンパ球は感染前にはほとんどないため、体内で出会う確率もかなり低くなってしまいます。

それ以外にも液性免疫優位の人、細胞性免疫優位の人がおり、それぞれ若干反応も異なります。

これらの要因が複雑に作用しあって症状に個体差が生じていると考えられます。

3つ目の謎;なぜかくも症状に個人差があるのか?

A;自然免疫、獲得免疫にはかなりの個人差がある。

 免疫反応は鍛えることができる。

 HLA型の問題やリンパ球は一つの抗原しか認識できないためコロナの抗原を持つリンパ球に出会える確率が少ない。

まとめ

今回は三つ目の謎まで解き明かすことができました。

ほんとはもっと短くまとめたかったのですが、hotな話題なだけに伝えたいことが多すぎて長くなってしまいました。

私の勤務している病院でも冷凍庫が配備され、間もなくワクチン接種が始まります。

ニュースを見ていたり、医療従事者ではない人とコロナの話題を話す時、勘違いしていることが多いように感じます。

ワクチンを接種する前にもう一度正しい知識を身に着けておきたいと私自身も強く思ったので今回は本書を選びました。

本書の後はワクチンについての本も読んだのでそちらの紹介もする予定です。

今回も最後まで読んで下さってありがとうございます!

次回も新型コロナウィルス七つの謎について紹介していきたいと思います。

次回は日本人が感染を免れた理由、集団免疫について紹介していきたいと思います。楽しみにしていてくださいね!

 

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