新型コロナ7つの謎②

Book Column

お疲れ様です!!

今回は前回の続きを見ていきたいと思います。

前回までは3つの謎が解き明かされました。

なぜ風邪ウィルスがパンデミックを引き起こしたのか。

ウィルスはどのように感染・増殖していくのか。

なぜかくも症状に個人差があるのか。

詳細は前回の投稿をご覧ください。

それでは続きを見ていきましょう!



自然免疫の重要性

最近になって自然免疫が種々の感染症の発症率を下げることが海外の論文で報告されています。

国際医療福祉大学院の高橋泰教授が提唱している説では「新型コロナウィルス感染症予防には獲得免疫ではなく自然免疫が重要である」としています。

この説では三つのことが仮定されています。

①新型コロナは病原性が弱く、獲得免疫がなかなか立ち上がりにくい。


②日本人の3分の1は既に新型コロナウィルスの暴露されているが、そのほとんどが自然免疫によって排除されている。

③日本人が欧米に比べて重症化率、致死率が低いのは自然免疫の差による。

しかしこれらの説は多少無理があるようです。

著者によって根拠を持って否定されています。

自然免疫も重要だと思いますが、それだけではコロナを予防するという明確な根拠は今のところは無いと頭に入れておきましょう。

訓練免疫とは

自然免疫は免疫記憶を持たないのですが、最近、自然免疫も訓練することで強くなると示す論文がいくつも出ています。

自然免疫の強化現象を新たに訓練免疫と呼ぶようになっています。

訓練免疫の例としてよく挙げられるのはBCGの効果です。

BCGは弱毒化したウィルスを用いたワクチンで結核の予防を目的として新生児に1回皮内接種します。

効果は通常20年程度持続します。

最近、BCGが注目されているのは「オフターゲット効果」です。

生後一年以内の幼児にBCGを打つと結核菌以外の病原体に対しても抵抗性が誘導され死亡率が低下することが分かっています。

すなわちBCG接種により自然免疫が訓練されるのです。

このメカニズムについては骨髄に存在する自然免疫系の前駆細胞に作用することが分かっています。

これらの細胞ではエピジェネティックな変化が生じ、炎症性サイトカインが産生されやすい状態が続いたのです。

訓練免疫はBCG以外のワクチンでも見られます。

12歳までの子供は炎症性サイトカインを作る能力が顕著に上がると研究で示されています。

新型コロナウィルスでは自然免疫が働いても感染が阻止できない場合があります。

子供ではACEⅡの発現が弱い場合があり、自然免疫も働きやすいため重症化に陥らないのかもしれません。



BCG仮説について

少し前からBCGが新型コロナウィルス感染症の重症化や致死率の抑制に関係する可能性が繰り返し報告されています。

これをBCG仮説と呼んでいます。

最初にこのことを指摘したのは「science」の2020年3月号です。

オーストラリア在住のジュン・サトウ氏が自身のウェブサイトに3つの点を指摘しました。

①国民に広くBCGを接種している国では非接種国と比較して新型コロナウィルスの致死者が少ない。

②特にイタリアとクロアチア、スペインとポルトガル、イギリスとアイスランドなど隣接しながらBCG接種国と非接種国では新型コロナウィルスの感染者、致死者が少ない。

③各国で使われているBCGには日本株、ソ連株、ヨーロッパ株があるが日本株、ソ連株を使っている国は重症化率、致死率が低い。

最近は乳児期にBCGを受けた人たちに追加接種したところ、新型コロナウィルスに感染しにくくなることが報告されました。

さらにこれに関しての研究が紹介されています。

その研究はアラブ首長国連邦で医療従事者を対象に行われた研究です。

1群はBCG追加接種して2群は非接種としました。

する1群は感染者0で2群は18名の感染者が出ました。

人数を見ても単純に比較できないのですが、BCGの追加接種にブースター効果がある可能性が示唆されたのです。

BCG仮説は近いうちに仮説ではなくなるかもしれません。

しかしアジア・オセアニアではなぜかBCGを接種していない国でも感染者、致死率が低いのです。

アジア・オセアニアに住むのは何が有利なのでしょうか?



ファクターX

京都大学の山中伸弥先生は日本人にはファクターXと呼べるものがあるかもしれないと言っています。

著者によるとそれは日本人に留まらず、アジア人全体であるのではないかとしています。

大隈典子教授(どこの大学所属かは本書中に記されていません。)は新型コロナウィルスの重症化は血栓形成が関わることがあるため、血栓形成を阻害するワルファリンに注目しています。

ワルファリンが効きやすい人は東アジアに多く、血栓ができにくいため重症化を防ぐことができていると示唆しています。

今のところこの説を実証している研究はありません。

今後の解析が待たれます。

血液型に関しても様々な報告がされています。

特にО型患者は重症化する割合が低いという傾向がイタリア、スペインでみられています。

ただし、日本人のО型割合は30%程度であるのに対して重症化を起こしにくい人の割合は45~50%とこちらの方が多いのです。

血液型もHLA型もワルファリン感受性もファクターXとは呼べないと思われます。

4つ目の謎;なぜ獲得免疫のない日本人が感染を免れたのか

A;血液型、血栓ができにく体質は重症化を防ぐ要因となるが、日本人が感染を免れた要因とは言えない。

 BCGは一定の効果がありそうだが、それだけでは説明できない部分もある。

 ファクターXの解明が待たれる。



集団免疫とは

「集団免疫」という言葉は昔から存在しています。

最近のニュースやワイドショーでは頻繁に聞かれた言葉だと思います。

イギリスは集団免疫の獲得を収束の目標としています。

国内では賛否両論あったものの多くの人たちは集団免疫が獲得可能と信じていました。

私もその一人でした。

では集団免疫とはどういう状態なのでしょうか?

集団免疫とは、特定の集団が感染症にかかるか、ワクチンを接種することにより多くの人が免疫を獲得して集団全体が感染症から守られるようになる現象のことです。

集団免疫を獲得するには社会の中に一定割合が免疫保有者である必要があります。

この最低ラインを集団免疫閾値と呼びます。

集団免疫閾値は計算で求めることができます。

集団免疫閾値=(1₋1/R0)×100となります。

R0は基本再生産数のことで1人の感染者がまわりの免疫のない人のうち何人に感染させ得るのかを示す数字です。

例えば麻疹ではR0が12~18となります。

1人の感染者がでると12~18人に感染者を広げてしまうのです。

新型コロナウィルスでは2.5人となります。

上記公式に当てはめると集団免疫を獲得するには60%という数字が出てきます。

もう察してくれてると思いますが、この60%という数字はとんでもない数字です。

今、日本での感染者の割合は3%程度でしょうか。

少なくとも世界の各地を見ても6割以上感染した地域はありません。

あのダイアモンドプリンセス号でも2割程度です。

それに加えて感染が拡大すると人々は警戒するため行動を制限して、対人距離をとるようになります。

すると社会には感染しやすい人が残るため、最初は勢いよく感染が拡大しますが、感染効率は少しずつ低下していきます。

社会的な状況によってR0は変動するのです。

そのため実行再生算数(Rt)というものがあります。

R0が理解できていれば集団免疫については理解できると思うのでRtについては割愛させていただきます。

詳しく知りたい人は本書を読んでみてくださいね。

これらに加えて抗体には3種類あり、中和抗体、役なし抗体、悪玉抗体があります。

中和抗体ができれば良いのですが、エイズの様に役なし抗体ができる場合もあれば、抗体依存性感染増強を引き起こす悪玉抗体ができてしまう場合もあります。

抗体ができる=免疫ができるわけではありません。

しかも新型コロナウィルスの場合抗体の持続が短く、数か月とされています。

集団免疫では抗体ができているかどうかが重要とされてきましたが、やはり自然免疫と獲得免疫の両者が重要となっています。

5つ目の謎;集団免疫でパンデミックを収束でさせることができるのか

A;集団免疫を自然に達成するのは不可能で集団免疫を達成するにはワクチンが必要。

 抗体には三種類あり、必ずしも中和抗体ができるとは限らない。

 新型コロナウィルスでは抗体だけでなく自然免疫、獲得免疫の両者が重要となる。



なぜ重症化するのか

新型コロナウィルス感染症の困った点は、一部の人に重症化がみられ、特に肥満や高血圧症、高尿酸血症の合併症があると、重症化のリスクが高くなります。

重症化の際には免疫機構が暴走するということがしばしば起きているようです。

新型コロナウィルス感染症では、感染が進むにつれて炎症性サイトカインが作られすぎて免疫の暴走が起こり、重症化に繋がります。

これもかなり専門的に説明されているのですが、長くなるので割愛します。

6つ目の謎;免疫の暴走はなぜ起こるのか

A;炎症性サイトカインの産生が亢進し、全身に炎症が波及する。その結果多臓器不全に陥ってしまう。

感染の初期にⅠ型インターフェロンが上手く産生されないことが炎症性サイトカインの産生過剰の原因となっている。

新型コロナウィルスにはⅠ型インターフェロンの産生を抑制する働きがある。

有効なワクチンは短時間で開発可能なのか?

ファイザー社のワクチンが昨年12月に開発されて日本でも採用されました。

この投稿を公開した時には私も一回目のワクチン接種をしているかもしれません。

本書は2020年11月に出版された本なので七つ目の謎は現実世界で答えが出てしまっています。

ただワクチンの知識として必要なものを抜粋して皆さんにお届けしたいと思います。

まず、先ほども出てきましたが、抗体には3種類あります。

中和抗体ができれば良いのですが、ウィルスにはスパイクタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質など様々なタンパク質があり、どれと結合するかで役なし抗体や悪玉抗体ができてしまいます。

現在開発されているワクチンのほとんどはスパイクタンパク質全体を標的としているので著者はその戦略に心配を抱いています。

ワクチンによって抗体を作るにはB細胞を活性化しなければならないですが、B細胞を活性化するにはT細胞を活性する必要があります。

その点を考慮してワクチンを開発する必要があると思います。

ワクチンの種類と費用

ワクチンの開発・製造には500億円ものお金が必要です。

これには理由があります。

一つは同じ条件で一定の標準のものを作るためには厳格に規制・管理された環境と設備が必要だからです。

それに加えて臨床試験には多くの手間と時間が必要です。

動物実験から始まり、第一相から第三相臨床試験まで行われます。

第三相臨床試験が終わるまでは通常2年はかかるとされています。

採取的な安全試験であり、予防効果確認試験でもあるので慎重に時間をかけて行われています。

これらの臨床試験以外にも工場の生産過程で時間が掛かったり、認可に時間が掛かったりと莫大な時間と費用が掛かります。

しかし一回有効なワクチンを作ってしまえばそれを埋めて余りある恩恵を受けることができるので世界中でワクチン開発競争となっている訳です。

これはあまりよくない傾向に思います。

本来、病気の予防のためのワクチンが、副反応などにより健康を害しては元も子もありません。

この点で気になるのはロシアでは第三相臨床試験をスキップしていることです。

日本で認可されているのはファイザー製、アストラゼネカ製のワクチンです。

どこのワクチンが使用されるか、臨床試験はきちんと行われているのか、ということを確認するのも自分の身を守るのには必要となりそうですね。

ところで皆さんは新型コロナウィルスのワクチンには新技術が取り入れられているということをご存じですか?

新しい技術とはDNAやRNAなどウィルスの遺伝子を利用してワクチンを作るという技術です。

それらをまとめて核酸ワクチンといいます。

実はこの核酸ワクチンはこれまでに実用化されたことはありませんでした。

新型コロナウィルスのおかげで急速に開発が進み、現在では実用化されるに至っています。

ファイザー、モデルナはRNAワクチン、アストラゼネカはDNAワクチンを開発し世界中で接種されています。

この辺は厚生労働省のホームページでワクチンの説明がされているのでそちらを見るのも良いと思います。

厚生労働省の説明によるとアストラゼネカはウィルスベクターワクチンと分類されているようです。

※本書ではDNAワクチンの中のウィルスベクターワクチンと説明されています。

いずれにしても人類今まで接種したことの無い種類のワクチンを接種し始めており、臨床試験のデータや接種者を対象としたデータには注目する必要があると思います。

7つ目の謎;有効なワクチンを短期間で作れるか

A;現在は実用化され接種が始まっている。

 RNA、DNAワクチンが開発されたが、まだ新しい技術である。

 有効なワクチンとされているが、臨床試験や接種者のデータをみて安全か判断しなければならない。



まとめ/感想

今回は話題の新型コロナウィルスに関する本の紹介をしました。

エビデンス度は最近の研究を紹介されていますし、章の最後には出典も載せてありますので高めに設定してあります。

リハビリ関連度は医療職であれば当然関わっているところなので星3とさせて頂きました。

読みやすさはかなり読みやすくなっており、初心者向けに解説も丁寧にされています。

そしてコンパクトなサイズなので持ち運びに便利です。(笑)

テーマは新型コロナに関する7つの謎でした、免疫の基礎知識からワクチンに至るまでの知識を謎を解き明かしながら解説していくというスタイルの本です。

皆さんに紹介するにあたって表現を簡易的にしたりしているので、ぜひ本書を読んでみてください。

新型コロナウィルスとそれによるパンデミックは今もなお続いています。

新型コロナウィルスに関する正しい知識を持つことが重要です。

そしてそれは日進月歩で更新され続けます。

新たな情報に目を向けつつ、それが正しい情報なのか吟味していく必要があると思います。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!



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