
佐々木圭一著 2013.2
第一章;伝え方にも技術があった!
第二章;ノーをイエスに変える技術
第三章;「強い言葉」をつくる技術
読みやすさ★★★★★
エビデンス★☆☆☆☆
リハビリ関連度★★☆☆☆
今回はひと昔前に流行った本の紹介です。
皆さんは対人コミュニケーションに自信がありますか?
著者の佐々木さんは人生のある時期までコミュニケーションへただったそうです。
そんな著者は就職し何の縁かコピーライターとなります。
最初は上手くいかず、「自分には才能がない」と毎日思い悩み途方に暮れていたといいます。
しかしある日気づいてしまいます。
伝え方にはシンプルな技術があることを。
感動的な言葉は、つくることができるということを。
ここからは数々の賞を受賞し華々しい経歴の数々を打ち立てていきます。
本書は著者が膨大な時間とトライ&エラーで導き出した方法論を紹介しています。
私達のことば/伝え方を磨くガイドになってくれます。
それでは内容を見ていきましょう。
確率0%をアリに変える!
「この領収書おとせますか?」
コロナで不況の中、落とせる領収書にも限りがあると思います。
こんな聞き方をしたのであればおそらく返事は「ノー」でしょう。
何がいけなかったのでしょうか?
著者が提案する伝え方はこうです。
「いつもありがとう、山田さん、この領収書、おとせますか」
たったこれだけの差で成功率が上がります。
理由は2つあります。
①「ありがとう」と感謝する言葉に人は否定しにくいからです。
②「山田さん」と名前を呼ばれると人は応えたくなるからです。
たったこれだけのことで0%だった確率を変えることができます。
このように知っていれば簡単な伝え方ですが、誰も鍛えようとしないのです。
一度知ってしまえば伝え方はあなたの武器になります。
ことばの一般常識にサヨナラ
問題です。
①「愛している」
②「愛してる」
相手の心に届くのはどちらでしょう?
正解は②です。
①はどこかまどろっこしくて、ちょっと教科書的で本当の気持ちが届かない感じがします。
きちんと気持ちを伝えるのには「い」という一文字が余計なのです。
コトバは元々相手に届くために作られたものでどれだけ正しくても、届かなければ役割を果たしません。
古き良き言葉を守ることも大切ですが、平安時代の清少納言でさえ「最近の男女は、言葉遣いがあやしい!」と嘆いていたといいます。
コトバは常に変化し続けてきたのです。
コトバの一般常識にサヨナラして気持ちの伝わる言葉を使ってみませんか?
「ノー」を「イエス」に変える技術
本書では「イエス」を引き出すためには3つのステップがあるとしています。
①自分の頭の中をそのまま言葉にしない。
ストレートに自分の思いを伝えることで、上手くいくこともありますが、それでは博打と一緒です。
少しでも可能性を広げるために、思った事をすぐに口にしてしまうのは得策とは言えないでしょう。
②相手の頭の中を想像する。
①でグッとこらえて、相手の頭の中を想像しましょう。
お願いごとに対してどう考えるか?/相手は普段何を考えているか?など相手の頭の中の事を想像してみましょう。
例えば「デートして欲しい」と思ったとします。
相手にもその気があれば問題ないのですが、相手に気が無い場合、Okしてもらえないですよね。
いったんこのお願いから離れて相手はどんな性格か?何が好きか?何が嫌いか?
わかりうる相手の基本的な情報を思い出してい見ましょう。
③相手のメリットと一致するお願いをつくる
相手の頭の中をもとにコトバを作っていきます。
ここでポイントは相手の文脈でつくることです。
相手がイタリアン好き、初めてのものが好きならそれを満たすコトバを作ります。
そうするとこうなります。
「デートして欲しい」が
「驚くほどうまいパスタの店があるんだけど、行かない?」となります。
これが相手のメリットと一致するお願いをつくる方法です。
これはどんなお願いにも使えるくらい万能です。
皆さんも試してみてくださいね!!!
イエスに変える7つの切り口
お願いするときの3ステップを見てきましたが、②の頭の中を想像するのは容易ではないと思います。
それが出来ていればコミュニケーション能力で悩むことは無いと思います。
でも安心してください!
本書には相手の頭の中を容易に想像できるよう7つの切り口を紹介しています。
①相手の好きな事
②嫌いな事を回避
③選択の自由
④認められたい欲
⑤あなた限定
⑥チームワーク化
⑦感謝
以上7つを紹介しています。
①、②は何となくわかりますよね。
相手の好きな事を想像し、嫌いな事を回避する言葉を作ればいいのです。
例えば、痴漢をやめさせるためのポスターですが、ただ「痴漢に注意」ではなく、
「住民の皆様のご協力で痴漢を逮捕できました。ありがとうございました。」とすることで痴漢はほとんどなくなったそうです。
ここでは相手の嫌な事=逮捕ですよね。
自分たちのメリットと相手のデメリットを一致させることが重要です。
③選択の自由も好きな事からの応用です。選択の自由があることでお願いがより受け入れやすくなります。
④認められたい欲は承認欲求のことです。
人間誰しも他人に認められたいと思っているものです。
ちなみにですが、少し前に流行ったアドラー心理学はこの承認欲求を否定しています。
「嫌われる勇気」という本があれだけ流行ったのにアドラー心理学を実践できている人はどれだどれだけいるでしょうか。
承認欲求はそれだけ強力ですし、アドラー心理学を心がけても、自分が生きてきた年数分時間をかけないと人は変われないとも言われています。
⑤に関しては人間元々「あなた限定」に弱いみたいです。
「あなたは特別ですよ。」言われると期待に応えたくなるものです。
⑥はただお願いするだけではなく、「一緒に勉強しよう」など自分も行動することでお願いを通す方法です。
「赤信号みんなで渡れば怖くない。」的なやつです。
これは別の本ですが「影響力の武器」で説明されている「社会的証明の原理」と似ているなと思います。
また「影響力の武器」はcolumnで紹介したいと思います。
⑦はとてもシンプルです。
感謝の気持ちを伝えるだけでお願いが通りやすくなります。
著者によると最終手段にして最大の方法だそうです。
ざっくり言うとこんな感じですが、詳細は本書を読んでみてくださいね!
強い言葉を作る
世の中の情報量は10年で530倍になったと言われています。
情報量が多すぎて感動の無い言葉は無視される時代となっています。
同じ内容なのに強く印象に残る言葉があります。
この「強い言葉「」とはいったい何なのでしょうか?
本書では「強い言葉」を、人の感情を動かすエネルギーのあるコトバと捉えています。
このエネルギーをコトバエネルギーと呼んでいます。
ではこのコトバエネルギーを生み出すにはどうすればいいのでしょうか??
その方法とはジェットコースターの原理と同じです。
コトバに高低差をつけることでエネルギーが生れます。
例をあげると、「あなたが好き」より「嫌いになりたいのに、あなたが好き」の方が高低差があります。
この高低差があるほど耳キーンってなるのですが、
間違えました。高低差があるほど人はグッとくるのですが、どうやって高低差のある強い言葉作ればいいのでしょうか?
本書では5つの技術を紹介しています。
①サプライズ法
②ギャップ法
③赤裸々法
④リピート法
⑤クライマックス法
以上5つです。
ではもう少し細かく見ていきましょう。
サプライズ法
これは伝え方に驚きをプラスする方法です。
一番簡単なのが「!」をつけることです。
その他にも「びっくり、」「そうだ、」「ほら」「実は、」などサプライズワードを入れることで強い言葉が完成します。
「そうだ、京都に行こう」「あっ小林製薬」などがこの方法を用いています。
ギャップ法
これはあえて伝えたい言葉の反対言葉を取り入れて強い言葉を作る方法です。
例えば「これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ」「嫌いになりたいのにあなたが好き」が挙げられます。
「これは私の勝利ではない、あなたの勝利だ」は有名なオバマ氏の大統領就任演説です。
オバマ氏にはジョン・ファブローという演説ライターがいます。
ファブロー氏はオバマ氏が言いたいことを感動的に伝える言葉に作り替え、感動を作り出したのです。
ギャップを作れば感動は作れます。
赤裸々法
この方法は普段意識していない自分の感覚と向き合います。
今まで言葉にしなかったものをあえて言葉にする方法です。
例えば、「好き」と人に伝えるときあなたの顔はどうなりますか?
赤くなりますよね。
緊張で喉はカラカラ、もしかしたら振るえるかもしれません。
これを言葉にすると唇が震えている。あなたが好き」となります。
他にも「何も考えられない。お腹がすいた。」のように伝えたい言葉の前に赤裸々な感情を取り入れるだけで強い言葉に生まれ変わります。
リピート法
何かを暗記したい時、どうしますか?
繰り返し口に出したり、紙に書いたりして覚えると思います。
強い言葉を作るにも繰り返すことは有効です。
例えば、「咲いた、咲いた、チューリップの花が」とか「まいにち、まいにち、僕らは鉄板の」とか印象に残っている歌詞は繰り返していることが多いです。
リピート法の手順はとても簡単です。
①伝えたい言葉を決める。
②繰り返す。
これだけです。
最近までカゴメのCMはなんで繰り返し「カゴメ、カゴメ」と言っているのかな?と思っていたのですが、リピート法を用いてより印象に残るようにしていたんだということに気づきました。
クライマックス法
人の集中力は、20分といわれています。
会議の後半に集中力が途切れてしまうのは仕方のないことです。
そんな時はこのクライマックス法を使うことで集中力を取り戻すことができます。
「これだけは覚えてほしいのですが、」
「ここだけの話ですが、」
「他では話さないのですが、」
「ワンポイントアドバイスですが、」
などのクライマックスワードを使用してから伝えたいことをコトバにすると印象に残りやすくなります。
ポイントはクライマックスワードから始め、いきなり伝えたい話をしないということです。
5つの強い言葉を作る方法を簡単に紹介しましたが、世の中見渡してみると結構この方法を使っていることが多いですよね。
まとめ/感想
今回の本はいかがだったでしょうか?
リハビリ関連度はそこまでありませんが、クライアントとの関係を築くために本書の内容は役に立つと思います。
読みやすさはかなり読みやすかったです。
文字数も少なく、図で解説されているため理解しやすいと思います。
エビデンス度は著者の経験に基づく内容だったので低く設定しましたが、莫大な経験から導き出された方法論は最短で結果を出してくれると思います。
ちなみに著者はサプライズ法を多用しているみたいです!
サプライズ法だけならすぐにでも実践できそうですね!!
そして「!」も30%増量するとより効果的だそうです!!!
つけすぎくらいのほうが感情が伝わりやすいと思います。
皆さんも本書の内容を是非、実践してみてくださいね。